強くも柔軟な芯を感じさせる鋭い視点とリズミカルで機知に富んだ話し方で、多くの女性から絶大な支持を集めるジェーン・スーが刊行した新著『ひとまず上出来』が話題を呼んでいる。

 コロナ禍に書き進めてきたエッセイには、40代を駆け抜けてきた彼女らしく、日々のリアルさが軽快に描かれている。人生100年時代、その中で何度もステージを変化させることも特異ではなくなった現状。そして人それぞれが尊重される時代においてもなお、心から消えることのない不安や恐怖。歳を重ねることで生まれる負の感情を、彼女はどのように捉えているのだろうか。

 

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仕事と家庭、両方回している人ほど、40代はめまぐるしく過ごしている

――40代半ばを過ぎた辺りから、仕事ばかりの日々でいいのかと思う日が少しずつ増えてきたそうですが、いつ頃からそう考えるようになったんですか。

ジェーン・スー(以下、スー) コロナの感染拡大の影響で、外に出られなくなってからじゃないですかね。リモートで仕事をするとなったら意外と調子がよかったし、人と会うのは楽しくもあるんですけど、会わなくても毎日楽しく過ごせることが楽だったというか。時間ができたことで、それまで外の景色も全然見ていなかったし、季節の移り変わりも感じないまま進んできてしまったことに気づいて、どうしよう? このままじゃよくないなと思ったのが、コロナ禍1年目だったんです。

 40代って、そういう人が多いんじゃないですか?……っていうと語弊があるかもしれないけど、例えば結婚して子供が生まれて保育所に入れて。やった! 保育所に入れられた! と思いながら育てているうちに子どもが学校へ行く年齢になって、熱が出たから迎えに行きますだとかあって。で、会社では昇進がー! うわぁー!とか慌ただしくゼーハーしながら気付いたらもう夜の10時だ、眠い!って。仕事と家庭、両方回している人ほど、40代はそんなふうにめまぐるしく過ごしているんじゃないかなと思います。