男系男子主義に反対する立場を取った保守派言論人に、皇學館大学名誉教授、田中卓(2018年没)がいる。彼は「男子尊重は中国大陸から入ってきた外来思想であり、男系女系という考えも西洋由来。女性を尊重してきた日本の伝統が消された。そもそも皇室の祖神である天照大神は女性であり、歴代8人の女帝が存在した。男系固執派が女性天皇を否定するのは、明治以来の皇室典範に底流する単なる男尊女卑思想によるもの」(要旨)と強く批判した。
小泉政権下での皇位継承をめぐる議論は白熱し、「テロが起こるのではないか」と危惧されるほどで、「国民の感情も2つに分裂してしまうのではないか」と懸念されもした。
紀子さまのご懐妊で議論は唐突に中断される
だが、国会会期中の2006年2月、議論は唐突に中断される。紀子さまのご懐妊が報じられたからだ。9月、紀子さまが皇室にとって41年ぶりとなる男児の悠仁さまをご出産。すると、女帝容認に向けた皇室典範改正の流れは、完全に打ち切られることになった。改正に反対していた人々は、「天祐」「神風が吹いた」と悠仁さまのご誕生を熱狂的に喜んだ。この時、秋篠宮家の長女・眞子さんは14歳、次女・佳子さまは11歳。皇位継承の議論と弟宮の誕生をどのように見ておられたのだろうか。また、男子を産むことができず、皇室に馴染めなかった皇太子妃の雅子さまを案じる声と批判する声の両方が当時のメディアには溢れ返っていた。
それにしても、男系男子による皇統の維持は、田中卓が指摘したように、本当に日本の伝統と言えるのであろうか。
(後編に続く)
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