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「最初は、母親に『Twitterの人と関わるの?』と言われ、怒られたりしました。それに対して、私が黙っていたから、口喧嘩にはなりませんでした。今は、父親とは家にいる間、普通に過ごせるようになりました。直接、何かを言われたわけではないですが、母親と話し合ったんだと思うし、入院してほしくないと思ったんだと思います。母親は主治医と話をしてくれました。私が態度を変えたわけではないですが、態度の変化は嬉しいです」

 直美の口から零れる前向きな言葉。もちろん、性暴力被害のトラウマが消えたわけではなく、今も幻聴に悩まされることはあるという。

事件現場 ©文藝春秋

「『てめぇ、消えろ』って男の人の声の幻聴が聞こえるんです。犯人の声っぽいです。フラッシュバックに似ているのかもしれません。そのとき、今もOD(オーバードーズ、過量服薬)をしないで何をしているんだろう? リスカも我慢して、うーん。とにかく布団にくるまっています。それでなんとかなります。周囲の人には、気分転換をしたらいいと言われますが、あ、最近は、髪の毛をピンクに染めました」

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 どうやら、自分なりにトラウマと付き合う方法を見つけたようだった。これまでとは違い、話す言葉の端々から少しずつ前を向いている様子がうかがえる。

 白石とDMをしていた当時の自分について、今はどう感じているのかも聞いてみた。

裁判が行われていた東京地裁立川支部 ©渋井哲也

「あのときは、闇にハマっていたからどうしようもなかったですね。あのときの自分はバカだったなあ。子どもでした。今は病院に通えています。つらいときには夜中でも病院に電話をして、看護師さんが電話に出てくれます。それに、警察の人にもSOSを出せるようになりました。幻聴が聞こえたときには、Twitterに『死にたい』と書くこともありますが、そこまで本気に思っていません。それに、ハッシュタグをつけたりはしないようになりました。それに、白石は、(性的な行為を)やってから(被害者を)殺しました。それは自分では嫌だなと思うようになりました」

 今後、“白石”のような人物と繋がった場合は、違った反応になるのではないかと思える。時間が経ち、直美は変わったようだった。だが、自殺願望は波があるのが一般的だ。今後、直美を取り巻く人間関係や環境次第では大きく変化する可能性もある。それでも、最初に取材したときのテンションとあまり違いはないものの、徐々に直美は「生」に向いている気がした。

【前編を読む】《座間9人殺害事件》「女性と性行為をしたいですね。今は」白石隆浩死刑囚が面会でヘラヘラと語った“性”と“お金”への異常すぎる執着とは

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