沖縄を嫌いな人はいない。温暖な気候、青い海、明るい人柄――。昨年の47都道府県の魅力度ランキングで沖縄は北海道、京都に次いで3位となった。国内で南の島を存分に味わわせてくれる観光地として、万人に愛されているのが、沖縄だ。
そんな筆者も沖縄が好きな一人だ。数年に1回のペースだが、沖縄の離島をめぐる旅をライフワークとしている。バックパッカー向けの宿を一人で泊まり歩き、昼間から砂浜で泡盛を呑む。何も考えずに頭を空っぽにするのが、お決まりの旅のスタイルになっている。
その沖縄が、今、日本中の観光客から敬遠されている。年末の新型コロナウイルスの新規感染者数は2桁にとどまっていたが、年明けから一気に感染が拡大。7日には1400人を突破し、9日にはまん延防止等重点措置が適用された。一時期は感染者数が2000人に迫る勢いもあり、緊急事態宣言への移行も検討されている。
今回の沖縄の取材は成田空港からLCCを利用したが、機内の乗客は20人もいなかった。旅行のオフシーズンとはいえ、この光景は異常だ。那覇空港に降り立っても、お土産売場の客もまばら。いつもの賑やかで明るい沖縄の雰囲気はどこにもない。
「年末年始は賑わっていたんですよ」
「年末年始は国際通りも観光客で賑わっていたんですよ」
そう話すのは、沖縄でTシャツやボクサーパンツの製造販売を手掛ける「フジタカクリエイション」の高里洋輝取締役だ。国際通りの直営店「KUKURU OKINAWA 市場店」も正月はコロナ禍前の9割程度まで売上が回復したという。
しかし、感染拡大とともに売上は激減。今は国際通りを歩く観光客はほとんどいない。取材の日、直営店でTシャツを2枚購入したところ、女性スタッフが手を叩いて喜んでくれた。
「今日の売上、5000円しかなかったんですよ」
沖縄は想像していた以上に大きな打撃を受けていた。
国際通りに6店舗「同じ通りに新規店を出しても既存店の売上が落ちない」コロナ禍前
取材したフジタカクリエイションの業績は、コロナ前まで順調だった。沖縄の観光客数が右肩上がりで増え続け、それに比例してお土産用のTシャツやハンカチが売れていた。
「1.6㎞しかない国際通りに一時期は6店舗ありました。国際通りに新しく店を出しても既存店の売上も落ちない。そんなサイクルがずっと続いていました」(高里さん)
フジタカクリエイションはうるま市に本社を構え、自社デザイナーによるデザイン力と、自社工場による少量多品種の製造を強みに、沖縄県内のお土産店にファブリック商品を卸していた。空港を始めとした県内の取引先は50社にも及び、沖縄のTシャツの製造販売のリーディングカンパニーでもあった。