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「今日の売上は5000円です…」6店舗あった直営店は5店舗が閉店…“観光の島”沖縄で起こる「サバイバル経営」

2022/01/20
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 たどり着いたのが全国の水族館や動物園にTシャツやハンカチ、ボクサーパンツを卸す営業活動だった。沖縄の美ら海水族館をはじめ、沖縄の観光地の土産店の商品を取り扱ってきたことから、魚や海をテーマにしたデザインには自信があった為、コロナを機に、全国の水族館に自分たちの商品を取り扱ってもらうよう、営業をかけることにした。

「商談に行くと、『わざわざ沖縄から来てくれたんですか』と驚かれることが多いです。取引先に沖縄が好きな人も多く、コロナ禍になって、初めて自分たちの住む沖縄が、たくさんの人たちから愛されていることに気づきました」

 コツコツと全国の水族館や動物園に営業をかけて、コロナ前の取引先も含めてようやく30社まで増やすことができた。今後は博物館や遊園地、フラワーパークなどにも営業先を広げていくという。

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全国各地の水族館、動物園の商品を製造している。©竹内謙礼

「ネット販売を目的として作った商品でしたが、直営店に並べたら…」

 コロナ禍真っただ中の2021年7月には、今までやっていなかったEコマースのビジネスにも挑戦した。

 高い印刷技術を生かし、有名絵画を題材にした布ポスターを販売するネットショップ「エノアル」を楽天市場にオープン。世界中の名画を約1か月で1000種ほどラインナップし、注文を受けたらすぐに工場でプリントして送付するドロップシッピング型のネット通販を始めた。

沖縄の自社工場に加えて、中国にも独自の工場を持つ。ロット数や価格、納期に合わせて臨機応変に対応することが可能。©竹内謙礼

 素材感のある布にプリントした絵画は折り目が付きにくく、耐久性が高いメリットがあった。紙に印刷した絵画とは違う味わいになることから、販売を開始してすぐに全国から注文を受けるようになった。

「ネット販売を目的として作った商品でしたが、直営店に並べたら観光客が絵画の布ポスターを購入してくれるんです。巣ごもりの影響で、部屋に絵を飾る人が増えているのかもしれません」

 ネット販売の売上はまだわずかだが、コロナがなければ誕生しなかった新商品といえる。

県外の水族館に卸している商品も本社の工場で製造している。デザインがかわいらしいと評判だ。©竹内謙礼

「今までのように無策で店をオープンして、商品をただ並べるだけの売り方はしません」

 コロナ収束後の観光客の回復に向けた戦略にも力を入れる。

「3月には国際通りに新店舗を再出店する予定です。今までのように無策で店をオープンして、商品をただ並べるだけの売り方はしません。店舗デザインからマーケティング、商品開発までしっかりやって、本気で売れるお店を作るつもりです」

 昨年、コロナ禍で店を閉じる際、他店の売上や商品構成を調べる機会があった。すると、同じような商品構成にも関わらず、自分たちの店よりも売上が大きかったり、客単価が高かったりといったケースがあることに気づかされたという。直営店の売り方がまだまだ未熟であることが分かったのだ。