不動産価格はなかなか下がらないどころか、都心部はどんどん高くなる。新築マンション価格は都区内ではすでに8000万円台の大台に乗り、一般庶民には到底手の届かないものになってしまっている。
こうした状況の背景には、国内外の投資家マネーが入っていること、パワーカップルと呼ばれる夫婦共働き世帯が、夫婦ダブルローンで背伸びしてでも買ってくるためなどいろいろ言われているが、実はマンション価格を釣り上げている大きなカテゴリーが、高齢富裕層による節税目的のマンション投資だ。
賃料保証が切れたアパートは“地獄の幕開け”
また空き家戸数が全国で848万戸に及んでいるかたわら、住宅の新築着工戸数は年間で83万戸。人口が減少に向かい、高齢化が急速にすすむのに、そんなに家が足りないのか、これも不思議な現象だ。住宅着工が多いと聞くと、マンションや戸建て住宅の供給が多いように感じがちだが、実態は違う。着工戸数の約半数は貸家、つまりアパートである。アパート建設も相続税を節税したいという目的からさかんに行われている。
マンション購入とアパート投資はいずれも不動産を使った節税目的が後押しをしている。一般庶民とは関係なく、日本の不動産マーケットはとにかく税金を少しでも安くしたいという歪んだ欲望のもとに成り立っているのである。
アパート投資による節税は、節税だけに目的を絞り、需給バランスにほとんど目を向けなかったことから、競合が続々誕生する。テナントがつかなければ運用収入がなくなる。賃料保証がある期間は安心だが、保証期間が切れると地獄の幕開けである。
アパートは賃貸マンションよりも安普請のものが多いため、大規模修繕や設備機器の劣化も早い。こうした工事関係も当初のアパート業者が仕切る。他社に頼めば、賃料保証は受けられなくなる。悪循環である。
相続する子供たちに未来はあるのか
マーケットから放り出されたアパートは相続されたのちも子供たちがこれを引き継ぐことになる。資産性がある優良な賃貸資産であればよいが、田園地帯に佇む(相続されるころには)ややくたびれてしまったアパートを相続した子供たちの未来はどこにあるのだろう。借入金をなるべく多く調達すれば、節税効果はさらに増します、と言われていたはずだ。その借入金の元本は、あまり減ることなく子供たちに引き継がれている。