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節税でマンション投資をする人はなぜ“現金が嫌い”なのか  下落する価値と多額のローンが子供にのしかかる“恐ろしい未来”

新築マンションは都区内で8000万円の大台に

2022/01/25
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 貸した金返せよ、の声がリフレインする。だが返済原資であるはずのテナント賃料がままならない。「ぴえん」である。アパートも売却できればよいが、どうだろう。田園地帯の中にある、空き住戸の多いアパートを何の理由で買う投資家がいるというのだろうか。

 この頃になると金融機関も頭を抱えだす。担保であったはずの土地建物。評価額が下がってしまうと、貸し付けた元本の回収ができるのかどうかという懸念が持ち上がっているだろう。差し押さえたところで、やはりマーケットで売却できないならば、今度は金融機関が抱え込むよりほかに術がなくなる。「ぱおん」である。

 不動産業者は涼しいものだ。もう売却してしまったし、運用での手数料なんてしれたものだ。すでにその後に建設したアパートの営業に忙しく、新築物件にテナントを連れて行ってしまうなんていう悪辣な行為もお手のものだ。家賃保証もトリガーにかかれば簡単にはずすことができるからだ。

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 結局相続した子供たちは親が残したパッとしないアパートと多額の借入金に悩まされ、潤沢に現金でも持っていない限り、せっかく親から譲り受けた土地を売却して返済するしかない。売却できなければ自己破産が待っている。良かれと思って始めた不動産投資が刃になって戻ってくるのがアパート相続対策の悲しい未来だ。

一方、タワマン節税は…

 タワマン節税もそんなにバラ色な未来が待っているわけではない。タワマン節税が本当にハッピーエンディングを迎えるためには、タワマンがこれからの未来どこまで価格を維持、値上りできるのかにかかっているからだ。

 すでに首都圏ではタワマンが900棟以上林立している。初めのころこそレアものだった超高層からの眺めも、たとえば豊洲エリアでは、せっかく眺望を買ったと言ってもよい高層階からの眺めも眼前に立ち上がった別のタワマンに塞がれてしまい、窓の外には他人の家、などと言う状態になっているマンションが多くなっている。

 マンションは新しさが命。続々立ち上がるタワマンの賞味期限は、未来において意外に短いのかもしれない。本来の不動産投資であれば、目の前に他物件が建ちそうだ、家賃はそろそろピークアウトしそうだ、ライバル物件が増えて価値が下がりそうだ、と判断すれば、その心配が現実化する前に売り抜けることができる。

 ところが相続対策が厄介なのは親が亡くなってくれないと、ミッションがコンプリートされないところにある。これでは売り時を失ってしまうのだ。