昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「エロと結びつけるのが嫌いなわけじゃないけれど…」『作りたい女と食べたい女』に見る、ほっとする食欲の描き方

宇垣美里が『作りたい女と食べたい女』(ゆざきさかおみ 著)を読む

2022/01/28

「週刊文春」で連載中のマンガコラムを2年分収録した『今日もマンガを読んでいる』(文藝春秋)を上梓した宇垣美里さん。連載の第52回(2021年7月8日号)では、『作りたい女と食べたい女』(ゆざきさかおみ 著、KADOKAWA)を紹介しました。

 料理が大好きな野本さんと、たくさん食べる春日さん。2人の女性が知り合い、少しずつ距離を縮めていく様子が描かれています。宇垣さんは春日さんの「体型」「食べっぷり」について「正直ほっとした」と述べていますが、その理由はいかに。

『今日もマンガを読んでいる』より一部抜粋して、特別に公開します(前後編の後編/前編を読む)。

©文藝春秋

◆◆◆

 高校生の頃、女子生徒間で製菓ブームが起こり、毎日のように開催されていたお菓子交換会。わざわざ様子を見に来た男子に「太るぞ」とのたまわれ、鬼のように気の強い友人一同と「貴様の知ったことか。人様の体型に意見するなど100年早いわ恥を知れ」という趣旨の関西弁でボコボコにしたことを覚えている。

『作りたい女と食べたい女』(ゆざきさかおみ 著)

 大人になって思うのは、あんなのかわいいもんだったな、ということだ。たくさん食べたら「太るぞ」、小盛にしたら「痩せてもモテないよ?」、甘い物食べたら「スイーツ笑」、料理を作れば「女子力アピール?」。頼むから、飯くらい好きに食わせろ。

『作りたい女と食べたい女』はそんな窮屈な世の中で、積もり積もった食の恨みをぎゅっと抱きしめて成仏させてくれた。

「食」を通して距離を縮める女性たち

 料理が大好きな野本さんは、色々な料理を大量に作りたいのに、一人暮らしで少食なものだから挑戦できずにいた。ところがある時、同じマンションに住む春日さんがたっくさん食べる人だと気づき、勇気を出して声をかける。タイプの違う2人の女性が食を通じてちょっとずつ距離を詰めていく描写にドキドキした。

『今日もマンガを読んでいる』(宇垣美里 著)

 何といっても最高なのは、野本さんが作ったシズル感たっぷりの卵8個米4合を使ったどでかいオムライスやホットプレートいっぱいの餃子を、春日さんが豪快に食べるシーンだ。がぱっと大きく口を開けてばくばくと平らげる様は爽快の一言。

 春日さんは言葉少なで表情も控えめだけど、美味しい! という感情が紙面から伝わってくる。春日さんが食べる姿を肴に酒を飲む野本さんの気持ちがよく分かる。