2/4ページ目
この記事を1ページ目から読む
どこでノッチを入れるか
――そういう運転技術のポイントはどうやって身につけるんですか?
三日月 運転士は最初、先輩である「親方」に師事する形で教えてもらうんです。そこで、この区間にはこんなカーブがあるとか、勾配などの特徴をまとめたマニュアルを手書きで作ります。どこでノッチを入れる(抵抗値を変える)とか、ブレーキをかけるとか……。その時のマニュアルは今も宝物のひとつです。
――すごいですね……。ひとつひとつ線区の細かい特徴を書き込んで。
三日月 例えば「右側にこのラーメン屋の看板が見えたらブレーキ」とか覚えるために、いろいろ自分なりの工夫をするんです。その上で雨の日やお客さんが多い日は停まりにくいのでブレーキを早めにかける、といった応用を重ねていく。そして何より大切なのは、速度を体で覚えることです。
――速度を体で?
三日月 今はどうかわかりませんけど、私の頃は速度計を隠してテストするんですよ。「今何キロ?」と聞かれて、感覚で「80km/hです」というふうに。あとは目視で「あの電柱までの距離はどれくらいか」とか。運転士はどの場所でどれくらいの速度で走っているのか、刻々と変化する現在の状況を正確に感じていなければならないんです。だからまさに「感覚」の仕事でもあると思います。
――完全に職人技ですね。
三日月 JRを辞めてから、よく『電車でGO!!』をやらされたんですけど、ゲームだとなかなかうまくできないんです。「やっぱり体で速度を感じられないとダメだね」なんて、言い訳してましたけど(笑)。