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元鉄道運転士! 三日月大造・滋賀県知事が語るセノハチ、ノッチ、JR秘話

滋賀県・三日月知事「鉄道インタビュー」#1

2017/12/04
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組合が違うと挨拶もしないような職場で

――なぜそこまでして広島運転所に行かれたのでしょうか。

三日月 将来のルートとして、労務、人事を希望していた。だから、経験しておきたいという思いですね。さっきも話したように、組合が違うと挨拶もしないような職場ですから。それじゃアカンということで、僕は積極的に職場で挨拶を交わしてイベントに参加して、先輩にもどんどん教えを請うて。そうしていくと、向こうも「お前も幹部になるならこういうことをわかっててくれや」とか言ってくれるんですよ。こっちも「じゃあ組合も組合で、もうちょっとこうしてくれれば」みたいな話をガンガンしました。ようやく、議論の土台ができてきたんです。

運転士時代の思い出グッズ 名札はいまも大切に保管してある

――まさに政治家のような手腕をそこでも発揮していたんですね。

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三日月 政治家への道は組合活動に取り組んだことがきっかけでした。組合の役員になって選挙活動も手伝うようになる。いろんな政治家の姿をそこで見ましたから、「これは任せとけへんな。いっそ自分が政治家になろう」という気持ちも芽生えて、それで会社を辞めて松下政経塾に入ったんです。

運転士時代に培った「運転感覚」と「調整」

――JR西日本時代を振り返ってみて、現在の知事のお仕事につながっていることは何だと思いますか?

三日月 現場発の問題をいかに「調整」するか、こうした意識の持ち方は組合活動に取り組む中で芽生えたんじゃないかなと思います。もう一つは、全体を俯瞰して物事を善き方向に導くためにはどうすればいいかを考える感覚でしょうか。

時計の裏には「三日月大造君の門出を祝う会」と刻まれている

――まさに「運転感覚」でしょうか。

三日月 そうかもしれませんね。たとえば、先頭車両で運転をしていると、いろんなことが見えてくるんですよ。シーンとした夜中に架線やレールを点検している人がいる。日が昇る早朝のホームで荷物を運ぶ人がいる。のどかな午後に、慌ただしく仕事をしている指令所の人がいる。たくさんの人の総合体で列車が走っていることが、肌でわかるんです。一方で、運転中は不測の事態にも備えていなければなりません。ダイヤが乱れたときや、お客様が具合を悪くされたとき、緊急時にいかに冷静に対応できるかは、運転士に問われる力量だと思いますが、それは今の仕事にもつながっていることだと思っています。

いつか行きたい「夢の鉄道旅行」

――知事職はお忙しくてなかなか旅行などはできないと思いますが、思い描く「夢の鉄道旅行」なんてありますか?

三日月 学生の頃ね、卒業旅行でオーストラリアに行ったんです。友人が酒造会社に就職すると言うので、JR西日本に入る僕と一緒に「酒と鉄道の旅行」を計画しましてね。それでオーストラリアの大陸横断鉄道に乗りました。おカネがないから硬い直角座席で3泊4日。まあ、数時間で後悔しましたけど(笑)、楽しかったですね。鉄道の旅の魅力って、JR西日本の瑞風(みずかぜ)のように最近注目されてますよね。だからいつかは乗ってみたい。贅沢な旅の象徴ですから。ええ、やっぱり先頭車両に乗りたいですけど、大人気だろうからなあ……、そういうわけにはいかなそうですね(笑)。

 

後編 鉄道の要衝・滋賀県 三日月知事が語る「日本の鉄道“新しい地図”」 http://bunshun.jp/articles/-/5155 につづく

写真=鼠入昌史 

みかづき・たいぞう/1971年生まれ。滋賀県大津市育ち。大津市立日吉中学校で生徒会長、滋賀県立膳所高校で生徒会長を務める。一橋大学経済学部卒業後、1994年にJR西日本に入社。駅員、電車運転士、営業等に従事。JR西労組中央本部青年女性委員長(専従)、JR連合青年女性委員会議長を歴任。2002年、松下政経塾に入塾し、03年11月に衆議院議員初当選(以降、4期連続当選)。民主党政権下で国土交通大臣政務官、国土交通副大臣を歴任。2014年7月、滋賀県知事に就任。「新しい豊かさ」を実感できる持続可能な滋賀をめざして「琵琶湖新時代」の創造に取り組む。知事就任後から始めた俳句を詠むことが楽しみの一つ。好きなものは、ふな寿司、しそジュース。

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