廃止さえ噂された信楽高原鐵道を、なぜ復旧させたか
――ところで滋賀県内には近江鉄道や第三セクターの信楽高原鐵道、京阪石山坂本線のようなローカル線もたくさんあります。全国的にローカル線の経営の厳しさが伝えられる中で、滋賀県も他人事ではないと思いますが……。
三日月 そうですね、これらの路線、いずれも滋賀県にとっては重要な公共交通です。ですから、その活性化には県としても取り組んでいきたいと思っています。もちろん交通事業者の皆さんにも頑張っていただきたいですが、私たち県民自身が乗る、使う、盛り上げる。それが大事なんじゃないかと思いますね。
――信楽高原鐵道は平成25年の台風で鉄橋が流されて、長期運休。廃止されるのではという噂もありましたが、無事に復旧しました。
三日月 被災したとき、私は国会議員だったのですがすぐに現場を見に行きました。ちょうど県が施設を保有して運行は事業者に任せるという上下分離をしたばかりでしたね。当時は充分な災害復旧のスキームもなかったので、国交省とよく協議をして財政措置が行われました。ただ、私のところにも「もう鉄道はいらない、バスでいいじゃないか」という声が届いたのも事実です。それでも私は鉄道でつなぐことの意味は大きいと思っている。それで復旧にこぎつけたわけです。
――近江鉄道は純粋な私鉄ですが、120年の歴史がある大変古い路線です。
三日月 県東部の5市5町を結んでいて、重要な地域の公共交通ですね。一方で、歴史が古いこともあって施設の老朽化も進んでいます。たくさんの方が乗られるところとそうでないところの濃淡もあり、鉄道事業としては大変厳しい経営だと聞いています。ですから、事業者や沿線の自治体、そして我々県もしっかり連携を取る必要があります。
びわこ京阪奈線は必要なのか、草津線はどうなるか
――近江鉄道と信楽高原鐵道をさらに延伸して京田辺方面に繋ぐという“びわこ京阪奈線”計画もあります。こちらについてはどう考えられていますか。
三日月 近江鉄道、信楽高原鐵道をしっかり盛り上げた延長線上にあるものだと思っています。今後、リニアが完成すると滋賀県の南部、ちょうど三重県との境を通ることになります。そうなれば、この地域の地図が大きく変わってくる可能性があります。その中で、びわこ京阪奈線は必要なのか。そうした将来を展望して交通政策を考えなければいけないでしょう。
――私鉄だけでなく、JRの路線に対してはいかがですか。特に草津線は琵琶湖線と異なりだいぶローカルな風情ですが……。
三日月 近江鉄道も開業してから120年ですが、草津線も120年を超えている。大変歴史のある鉄道です。また、通学ではたくさんの学生が乗っていますし、我々にとっては相当重要な路線です。利便性向上のため、我々は沿線市町等ともに期成同盟会を作って複線化をJRに長年にわたりお願いしているところです。ただ、こればかりは「卵が先か、にわとりが先か」で。複線化したらお客さんが増えると言っても、お客さんがいないから複線化は無理だとなってしまう。ですから、我々もできることからやっていこうと。
――具体的には?
三日月 例えば「SHINOBI-TRAIN」という忍者ラッピングの列車を走らせるというのもひとつ。あとはICOCAの使用エリアですね。今は草津線の貴生川駅まで使えるのですが、そこから先、柘植駅までは使えない。それでは不便だということで、JRに強く要望して来年には使えるようになる見込みです。こうやってお客様を増やす取り組みを、地域としても続けていって結果を出していくことが大切ですね。