「政策面でも立場の弱い人を顧みない政策で町民への説明も十分ではありません。もっと弱い方、町民の声を聞く政治をしてほしいというのが根本にあります。ただ、黒岩候補には力もお金もありますし、圧力も感じています……」
あくまで政策での争いを目指すという新井氏に対して、黒岩氏は1月22日午後16時、町の中心から近い住宅街で行った街頭演説で怒りで声を震わせた。黒岩陣営は選挙活動中自身の疑惑を全面否定し、新井氏が嘘をついていると主張し続けた。検察が新井氏の告訴を不起訴にしたことで、自身の疑惑は晴れたと語った。20日午後17時、黒岩氏に記者が直撃すると、黒岩氏は新井氏への「怒り」を隠さなかった。
「こちらからすると、ふざけるなという気持ちです。告訴するだけしておいて、不起訴になって都合が悪くなったらそのことに触れないなんて。選挙ですから政策で争うのはもちろんですが、人間性というのも選択の1つの基準だと思います。私のところへ温泉協会の女将たちをはじめとした女性の応援者がたくさん来てくれたのは、彼女たちが『あんな手を使って町長を貶める候補者を許せない』と怒ったからですよ」
「セクハラなんて何の得にもならないことは…」
こうした「異例の選挙戦」を町民はどう見ていたのか。「文春オンライン」の取材に対して町民の多くは黒岩氏に対する支持を口にした。町内で飲食店を経営する一家の男性が語る。
「就任から黒岩町長をずっと見ていますから、セクハラなんて何の得にもならないことはしないと信じています。もちろんリーダーだから強引な部分もあり、そこを嫌う人もいるかもしれない。でも数字で見ると、バブルの頃よりも観光客が来るようになりました。町に対してこんなに結果を出した町長は自分が知る限りいません」
一方で新井氏を支援する男性は、この町の空気に違和感を覚えたという。