価値の味わい方が、人によって違う「脳科学的な理由」
この、特殊な状況がもたらす「特別な価値」は、従来非合理的なものだと考えられ、これまでの経済学ではあまり大きく取り上げられることはありませんでした。
しかし、脳科学が発展して、感情や非合理的な心の動きが価値を大きく左右するものだということがわかってくると、これを体系化しようという流れが学問の世界にも起こってきたのです。この分野は神経経済学と呼ばれています。
ただ、この特殊な状況が呼び起こす感情がもたらす価値については、遺伝子も脳の後天的な育ち方による差の影響も大きく、個人差がかなりあるのです。
だからこそ、その価値の味わい方が、人によって非常に違ってしまう。プレゼントしてくれた人の目の前で即座に包みを開け、うわあうれしい！と一瞬のうちにそれを味わって使い倒す、という人もいれば、できるだけ長い間、開けずに大切にとっておいて、じわじわとその喜びを長く味わい続けたいという人もいるのです。
流行に左右されないものをプレゼントしてみては
お義母さまはかなりうれしかったのだと思いますよ。あなたが私のことを思って選んでくれたんだな、という感情を、もったいないからしみじみ味わう。よほど大切に思っているのだなということが第三者から見てもよくわかる感じではないでしょうか。
一瞬の盛り上がりが大事な人と、じわじわ味わいたいという人。この違いは確かに脳の機能の違いで、ドーパミンの動態で変わると考えられます。日本人はお義母さまや私のようなじわじわタイプが多いかもしれません。あなたのようにその場で包装紙をビリビリと破いて使い始めるのは、むしろ少数派。
脳のタイプは違えどお義母さまと一緒に楽しくお買い物できるなんて、とても素敵な関係ですよね。コロナが収まって、またお出かけできる日が早く来るといいですね。お義母さまの脳のタイプがじわじわ型だとすれば、もし可能であれば次からは、流行に左右されないロングセラーのものをプレゼントしてさしあげるのはいかがでしょうか。
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※最新回は発売中の「週刊文春WOMAN 2022年 創刊3周年記念号」に掲載中
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text：Atsuko Komine
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2021年 秋号
2021年9月21日 発売
定価550円（税込）
