シェアハウスを出て、2人で暮らし始めるパターンも
ほとんどの居住者は、他の住民に対して恋愛感情ではなく、仲間意識のようなものを持つという。時間が経つにつれてその絆は深くなり、疑似家族のようになっていく。
「これは個人的な印象ですけど、シェアハウスって、家族関係に恵まれなかった人が集まりがちなんですよ。
親元を逃げて来たとか、他に頼る人がいないとかで苦労してきていて、シェアハウスの生活で初めて心を許せる家族的な存在ができて、ハマってしまうんです。それで、もう経済的に一人暮らしできるのにいつまでもシェアハウスにいたり、『老人になってもみんなで一緒に暮らそう』とか言い合ったりする。
女性同士のほうがそんな関係になることが多くて、シェアハウスを出て女性2人で暮らす、みたいなパターンはよく聞きますね」(小田さん)
統計を取ったわけではないが、男女混合シェアハウスに入居するという時点で、その人たちにはある程度、特定の傾向があると、先述のシェアハウス運営者中山さんはいう。
「前提として、シェアハウスの家賃は地域の賃貸相場に比べて圧倒的に安い。なので、男女混合とか気にする以前に、ここにしか住めないから住んでいるという人も多く、多少の不都合があっても我慢して暮らしている。それに、そもそも社会性というかコミュニケーション能力に自信がないとシェアハウスを選ばないですから、それなりに意識が高い人が集まる傾向があると思います」(中山さん)
それに、選択肢がないという意味では運営側も同じだ。
「シェアハウスを運営している側も、空き部屋があるとそのぶん家賃が入らないので、男女で選り好みしている余裕がないという部分もあります。知り合いがやってるシェアハウスは、最初は女性専用にしようとしたんですけど、入居者が埋まらないので男性も入居させるようになり、なし崩し的に男女混合になってしまったようです」(中山さん)
先述の小田さんも、そもそも恋愛する余裕がないのでトラブルも起きないと達観する。
「やっぱり日々の暮らしに追われてるんで、結果的に恋愛が二の次になってしまうのかもしれないですね。それにトラブルになったらシェアハウスを出なきゃいけなくなる可能性もあるので、だったら色恋沙汰は外でしようと思います」(小田さん)
ひとつ屋根の下で展開する、青春群像劇はフィクションの中だけ。現実はもっと世知辛いようだ。