同日、準奈さんの両親はショックから立ち直れずにいる状態で、第三者委員会の弁護士や医師、教育委員会の担当者などの立ち会いのもと、聞き取り調査を受けた。調査の中で遺族が名前を黒塗りされた加害者生徒について質問すると、第三者委員会の委員から意外な言葉が返ってきたという。
「『アンケートでイジメを行っていたと名前があがっている生徒への調査はどうなっていますか?』と聞くと『まだしていません』と言われたんです。『いつ話を聞く予定ですか?』と聞いても無言になるだけで、期末テストなどを理由に時期は明言しませんでした。そもそも第三者委員会の調査では家庭環境やせっちゃんの性格についてばかり聞かれ、おそらく『イジメよりも家庭環境に問題があった』という結論を出したいのだと思います」(同前)
準奈さんが受けていたと見られるイジメの徹底究明ではなく、早期の問題決着だけを望む姿勢は教職員の言動からも感じたという。
「担任の先生はせっちゃんが亡くなった直後に、娘とのトラブルが指摘されていた女子生徒ら複数名に対して『あなたたちは一緒にいないほうがいい』と、声を掛けていたそうです。真相究明ではなく、むしろそれをごまかすような行動に耳を疑いました。担任の先生は今では私の電話にも出なくなりました。
他にもせっちゃんが所属していたバレー部の前顧問が部員の保護者に対して、『もう原因はわかりましたし、解決しました』と平然と答えたこともあったそうです。何も解決していないのになぜそのような発言をしたのか信じられません」(同前)
「せっちゃんは命を失っているのに…」
娘を失い、その原因究明のメドも立たない。準奈さんの父親は、苦しかった1年間をこう振り返る。
「本当に長かったです。今までいることが当たり前だったせっちゃんが、どこを見渡してもいない。いまだにそれが現実と信じられず、自分が何をしていたか思い出せない日もたくさんあります。娘が天国へ行ってしまった金曜になると、いつも喪失感が襲ってくるんです。この前、せっちゃんの妹のバレーボールチームが山形で1位になったんですよ。せっちゃんが天国から応援してくれたのかな。せめて、せっちゃんをイジメた生徒が誰かを知りたいと思うのはダメなことでしょうか。せっちゃんは命を失っているのに……」
そう話す父親の目からは、涙が溢れ出ていた。母親は、心身の調子を崩す日々が続いている。