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「こみあげてくる感情が好きなんです」“最高のキス”を熱演するあまり…劇団ひとり(45)が思わず口走った「名前」

2月2日は劇団ひとりの誕生日

2022/02/02
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 主演の柳楽優弥には役になりきってもらうため、たけしのモノマネの第一人者である松村邦洋を指導につけるという徹底ぶりだった。本作ではその場面はなかったが、ひとり自身、演じ手となる場合はとことん役に没入する。

 俳優としては、NHKの朝ドラ『純情きらり』(2006年)で演じたヒロインの初恋の男性など印象深い役もいくつかあるが、それ以上に彼のなりきりぶりが発揮されているのは、テレビ東京系の深夜バラエティ『ゴッドタン』だろう。

「最高のキスの芝居」に没頭するあまり…

『ゴッドタン』では2007年に始まった「キス我慢選手権」という名物企画がある。これは、あの手この手でキスをねだってくるセクシー女優に対し、芸人がどれだけ我慢できるかというのが本来の趣旨だった。しかし、ひとりだけはその趣旨を外れ、キスを我慢するのではなく、最高のキスの芝居をすることに全力を注いだ。相手役を演じたみひろ(現・金子みひろ)のアドリブもあいまって、思いがけずドラマチックな展開となり、感動的ですらあった。

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『ゴッドタン キス我慢選手権 完全版』

 スタッフも企画した当初は、まさかこんなふうに転がるとは思いもしなかったようだ。同番組の構成作家のオークラは、《この時、僕は目から鱗が落ちた。本当に面白くてオリジナリティのある企画とは「成立」だけではなく「ちょっとした不成立」の中にある。この不成立こそ、番組が生み出すノリなんだと気づいたのだ》と著書で振り返っている(『自意識とコメディの日々』太田出版)。

「キス我慢選手権」はそれ以来、恒例企画となる。ある回では、演技に入りこむがあまり、みひろに向かって思わず「あかね」と、当時ひそかに交際中だった現夫人の大沢あかねの名前を口走ってしまったこともあった。