「速水健朗×おぐらりゅうじ すべてのニュースは賞味期限切れである」のスペシャルゲストに『おしゃれはほどほどでいい』(幻冬舎)を上梓した野宮真貴さんをお招きする2回目は、「渋谷系」の再評価と野宮さんがピチカート・ファイヴ時代に体験した「キッチュ」なおしゃれについてです(全3回の2回目。#1が公開中です)。

左から、おぐらりゅうじさん・野宮真貴さん・速水健朗さん

渋谷系的な音楽性のミュージシャンって世界中にいるんです

速水 いま渋谷系が再評価されているムードがあって、野宮さんは仕掛けた側でもあると思うのですが、どういうふうに感じられているのかなと。

ADVERTISEMENT

野宮 若いミュージシャンでも「渋谷系ずっと聴いてました」というような方がどんどん出てきているなというのは感じますけど、そこまでブームになっているのかな。

おぐら 再評価というより、ある程度の時間が経って、渋谷系とは何だったのかを改めて冷静に考察する動きはありますよね。

野宮 渋谷系的な音楽性を志向しているミュージシャンって世界中にいるんです。たとえばブラジルのPato Fuというバンドとか。ブラジルでも渋谷系はすごく人気ですよ。

おぐら 以前、野宮さんにインタビューしたときに、ピチカートでワールドツアーをしている当時、世界中にTOKYO=かっこいいと思っているファンの人たちがいて、ご自身でも「自分たちは世界で一番かっこいいことをやってるんだ」という意識があったと。

野宮 はい。それは信じてましたね。小西さんのオリジナリティと才能は世界でも負けないって。『東京は夜の七時』ができた時、純粋に「なんてすごい曲なんだ」「こんな曲聴いたことない」って思ったんです。

 

おぐら あと、世界中どこ行っても小西康陽みたいな人が必ずいるっていう。

速水 音楽オタクで、映画マニアで、内気な感じで。

野宮 本当にどこの国へ行ってもいたんですよ。やっぱりファッションとか佇まいが一緒なんです。

ピチカート・ファイヴは、なにをもって「ベスト」なのかわからない

速水 ピチカートを「東京が世界で一番かっこいい」を体現するコンセプトグループとして見た場合、アルバム『さ・え・ら ジャポン ca et la du japon』(2001年)がその集大成だと思うんです。あれはリリースされたときにはわからなかったけど、あとからわかる部分もけっこうあって。

おぐら ピチカートの事実上最後のオリジナルアルバムですし。曲名だけを見ても「さくらさくら」「君が代」「nonstop to tokyo」「東京の合唱」「大東京」そして「ポケモン言えるかな?」ですからね。

速水 ピチカート・ファイヴって、これだけ時代に大きな影響を与えながらも、振り返るのが難しいグループなんです。アルバム1枚とってもエディション違いがたくさんあったり、レコード会社も違っていて。ベストといったところで、なにをもってベストなのかがわからない。「The Best of ABBA」みたいなものは作れないでしょう。

おぐら ミニアルバムとかリミックス版とかもいっぱいありますし。いや、それを集めるのが楽しいんですけど。

速水 ピチカートはどうやってさかのぼればいいんですか?

野宮 まずは私のアルバムを買って、ライブに来てもらえたら。10月に「野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。」も出しましたし。

速水 なるほど(笑)。