石原慎太郎は生きている。訃報から1週間が経ち、あらためてそう感じています。現在進行形で、メディアや世の中に大きな影響を与えていると思うからだ。

 たとえば、大阪の毎日放送(MBS)が元日に放送した特番「東野&吉田のほっとけない人」の件。日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)、吉村洋文副代表(大阪府知事、大阪維新の会代表)、同会元代表の橋下徹氏をそろって出演させ、政治トークをさせたことが問題になっている。

石原慎太郎 ©文藝春秋

政治家とじゃれあう報道の在り方に疑問

 このニュースにふれたとき、私の脳裏には石原氏の顔が浮かんだ。かつて石原氏が都知事だった頃、そのタレント性や声の大きさ、わかりやすさをメディアはありがたがり、楽しんでいた節があると思う。差別や蔑視発言があったのに(決して失言ではない)、それも「石原節」「本音」などと杜撰にまとめてもてはやしていなかったか。視聴者だって「面白くてわかりやすいからいいじゃん」と思っていたかもしれない。

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 そんな「地元のスター」とじゃれあう「報道」の在り方を見るにつけ、私は石原氏の都知事時代を思い出さずにはいられない。

 石原氏の生涯を伝える紙面で多かったのは、ああ見えて実はいい人という切り口だった。

『「威圧感」も豊かな「喜怒哀楽」魅力 石原氏死去』(産経ニュース2月1日)

 ここで石原都知事時代の職員の言葉が紹介されている。

「表で怒鳴られると、むしろ気持ちよかった。不思議なんですけど、あの石原さんに怒られたって、何かうれしかった」

「都庁に入ってからずっと仕えてきたが、本当に厳しい人だった。怖いし、威圧感も存在感もあった。でも、時折見せる人情味が魅力的な人だった」