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 ジャニーズ事務所には、HYの起用を見送った経緯について関知していたか、またユニバーサルミュージックに起用を見送るよう要請をした事実があるのかなどについて事実確認をしたところ、こう回答があった。

「弊社は、そもそもご質問いただいた他社間の案件の推移について関知、関与しておらず、ご質問いただいたような要請を行った事実も一切ございません。弊社としては、弁護士や関係各所とも連携の上で、引き続き法令を遵守して事業に邁進して参ります」

HYのメンバー(HYのTwitterより)

弁護士の見解「特殊な事情がなければ、契約自由の範囲内」

 一連の対応に法的な問題はないのだろうか。芸能トラブルに詳しい伊藤海弁護士に聞いた。

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「起用を見合わせたことがレコード会社の忖度に留まる場合は、直ちに法的問題が発生することはありません。視聴者としては面白くはないでしょうが、レコード会社やテレビ局、アーティストがどこと契約するかというのは、契約自由の原則から当事者各々が自由に決定できます。

 今回の場合、アーティストの出演機会を奪ってしまうというエンタメ倫理的な問題点は残るかもしれませんが、忖度自体は圧力を受けた際に脅迫を受けたなどといった特殊な事情がなければ、契約自由の範囲内なんです」

『アノニマス』のワンシーン(公式サイトより)

ジャニーズに業界が「過剰な忖度」をする理由

 しかしながら、香取やHYなどのアーティスト、ひいてはそのファンにとっては「契約自由の範囲内」と言われても、納得しがたいところはあるだろう。伊藤弁護士は、ジャニーズ事務所へ公取委が注意処分した件について、「極めて不十分だと思います」とこう指摘している。

「当時、公取はジャニーズの大胆な経営手法や芸能界の仕組み、パワーバランスを何もわかっていなかったと思います。注意勧告を受けて、仮にジャニーズ事務所が『新しい地図』の3人の番組起用を妨げるような働きかけをやめたとします。そうすると、3人はどこかの局で主演を張れるかもしれません。だとしても、ジャニーズ事務所としては、彼らを起用したテレビ局にその後、ジャニーズタレントを送り込まなければいいんです。ジャニーズ事務所としてはオファーがあっても黙って断ればいいだけ。ですから、ジャニーズとしては全く痛くないわけなんです。

 そうなると、レコード会社やテレビ局などから、過剰な忖度がされていくことになるでしょう。そして現状ではそれを取り締まる法律はありません。芸能界の健全な成長のためには不十分であると言わざるを得ません」