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「メダルをもらうのは、氷上でいちばん楽しそうなチーム」3度の五輪を経験した本橋麻里が語る“北京の戦い方”

ロコ・ソラーレ代表理事 本橋麻里インタビュー #2

2022/02/10
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ポジティブ思考のサード・吉田知那美選手

――サードの知那美選手とは、先日カナダ滞在中に長電話をしたと聞きましたが、どんなことを話したか差し支えない範囲で教えてください。

本橋 もちろん、カーリングの熱い話もありますけれど、その反面「ダハハハー」と笑い合うようなくだらない話もします。別に言えないわけではないですが、くだらなすぎるのでちょっと内容は勘弁してください(笑)。ちなとは若干、思考が似ているところがあるんですよ。

――あんまり共通点がない気もしますけれど……。

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本橋 よく言われます。でも、考えるテンポや、とりあえずスパっと決断してしまう性格とか、「あそこでショック受けておいて良かったよね」とか物事をポジティブに振り返る部分は割と共通していて、彼女が悩んでいると見ていて分かることは多いです。

スイープ面でチームに安定感をもたらす鈴木夕湖(右) ©️どうぎんカーリングクラシック2021

天然キャラのセカンド・鈴木夕湖選手

――セカンドの鈴木夕湖選手についてはいかがですか?

本橋 夕湖は、夕梨花と一緒にチーム立ち上げからずっとロコ・ソラーレを支えてきてくれた選手で、当時から私の常識や既成概念を壊してくれる大切な存在です。大会後のインタビューでマイクが回ってきて、受け取ってそのまま次の人に渡す、という規格外の行動に出たこともよくありましたね(笑)。

――ちょっと独特というか天然のキャラクターですよね。

本橋 そうなんです。リケジョらしいというか、自分の中で考えはあっても、それをあんまり言葉で発するのは得意じゃなかったのだと思います。チーム結成当初はマイクをスルーしていたのですが、近年は独特の視点からの意見を言ってくれる。それはチームにとって大きなプラスですね。

――ロコ・ソラーレの選手もよく「夕湖さんのすべらない話」をしてくれますが、尖ったエピソードが多いですもんね。

本橋 さすがみっちゃんの娘さん!という感じです。

今季好調の秘訣は「基礎練を人生でいちばんやったから」だと鈴木(中央) ©JCA IDE

――みっちゃんとは?

本橋 夕湖のお母さん、倫子(みちこ)さんです。常呂町で頼られて愛されている名物お母さんで、すごく優しく面白い方です。

――そのみっちゃんの娘さんは今季、好調を維持していますね。

本橋 2021年2月の稚内(日本選手権)で北海道銀行フォルティウスさんに負けて、彼女は「本当に心の底から悔しい」としっかり泣いて悔しがって。そこから食事やトレーニングを含め、勝つためにスケジュールから見直していました。その姿をチームのみんなは近くで見ていたので、好調の理由はみんなが理解できていると思います。

――なるほど。ある意味では驚かないというか、好調は想定内というニュアンスなんですか?

本橋 うーん、でも驚きはあるんです。王貞治さんの「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」という言葉が私は好きなんですけれど、努力をしっかりと成果に結びつける選手が一流なんだと思います。それは本当に簡単なことではないから。