女子カーリング「チーム青森」の一員としてトリノ五輪(2006年)、バンクーバー五輪(2010年)に出場した本橋麻里。2010年には、地元の北見市で新チーム「ロコ・ソラーレ」を結成した。その後は、結婚、出産を経て平昌五輪(2018年)に出場して、日本カーリング史上初のメダルを獲得した。
現在は2児の母でありながら一般社団法人ロコ・ソラーレの代表理事を務め、セカンドチーム「ロコ・ステラ」の選手としても活動している本橋に、4年間の変化と北京五輪の見どころについて聞いた。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
北京五輪へは「ご褒美だから楽しんで」と送り出した
――現在、ラウンドロビン(総当たりの予選)で健闘中のロコ・ソラーレ。実は本橋さんはチームには9月のカナダ遠征出発以来、半年近く会っていないんですね。
本橋 はい。こんなに離れていたのは出産の時くらいなので正直、寂しい思いはありますが、電話やオンラインでコミュニケーションはとっています。こんなご時世では仕方ないですね。
――北京五輪にはどんな言葉で送り出したのですか?
本橋 いつも通り楽しんでというようなことを。
――先日のオンライン会見では「頑張れ」という言葉は使わないようにしている、という話もありました。
本橋 ロコやカーリングだけに限らずですが、オリンピックという舞台にたどり着いたアスリートは全員、頑張ってきてそこに立っている。そんなの当たり前すぎるので、私は「この先はスペシャルな時間だよ。頑張ってきたご褒美だから楽しんで」というようなことを自分の言葉で伝えた感じです。
「頑張ってね」のあとに続く二言目に救われて
――それは自身がこれまでに3度の五輪に出場して思ったことですか?
本橋 そうかもしれません。「頑張ってね」と声をかけてくれる方は本当に100%応援の気持ちでおっしゃっているのはわかっていても、結果が出ていない時や伸び悩んでいる時、神経をすり減らして競技に向き合っている時は、「頑張ってるよ。でも……」と声援が自分の中でネガティブに響いてしまうこともありました。
あるいは「頑張れ」という言葉で、自分の置かれている状況や弱さまで見透かされているような気がしてしまったり。それも含めて自分が未熟だっただけなんですけれどね。でも今は北見で暮らしていると「頑張ってね」と、そのあとに続く二言目に救われていたりもします。
――二言目とは?
本橋 以前は「頑張ってね。次は勝てるよ」とか「金メダル期待してるよ」なんて無邪気に言ってくれる方が多く、どちらかと言えば希望を伝えられている感覚でした。もちろんそれもありがたい応援なのですが、最近は北見のみなさんも情報が入ってくるようになって、「頑張ってね。今みんなカルガリーなんだってね。寒いでしょうね」とか「次はオランダだってね。身体だけは気をつけて」といった、アスリートというよりは近所の子や親戚の子への声かけという感じで変化があったかもしれません。
すごい気が楽になりますし、「ありがとうございます。オランダの試合はテレビでやるので応援してください」と、会話のきっかけにもなってくれる。ちょっとずつカーリングがツールになっているなと実感できて嬉しいです。