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 大人の間でプリキュアがニュース的に話題になるのは、こうした <vs.社会の抑圧> を描いた場合が多いと感じます(例:『「わきまえる」ヒーローの時代は終わった プリキュアと「鬼滅の刃」煉獄さんの共通点』)。ニュースといえど視聴者の感想の一側面に過ぎず、作品の制作陣が描いた全貌はこれだけに留まりませんが、こうした共通の話題に結びつける議論が存在しました。

「プリキュアは時代に応じて価値観をアップデートしている」と言われることも多くあり、とりわけ<vs.社会の抑圧> を描く際にこの視点は強く意識されます。現代では、メジャーな作品はフィクションであっても社会問題・政治的正当性への配慮が必要であるという信念が広がりました。「プリキュアは多くの子どもが視聴するからこそ、社会的役割を果たさねばならない」という期待に制作陣は応えようとしてきたのだと思います。

『HUGっと!プリキュア』42話の、男の子であるアンリの変身シーンは話題になりました 公式サイトより

話題になりづらいテーマを扱う理由

 ここで比較しますが <vs.自己決定の難しさ> と <vs.社会の抑圧>は対照的な概念です。

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 <vs.社会の抑圧> は多様性、ジェンダー、人権などの既存の問題に接続しやすく、大人を相手に論じやすいものです。その結果、ニュースや記事になった時に、普段プリキュアやアニメ全般を視聴しない層にも問題提起が届きやすい分野です。

 一方で <vs.自己決定の難しさ> を描く作品は個人の内面で完結する部分が大きく、その作品世界の中で成立する独特な価値観・美徳を1年間かけて精密・精巧に描くことができます。作品を楽しんだファンには深い印象を残しますが、一般層にまで社会問題と繋がって拡散していくケースはどうしても少なくなります。

 しかし上述したように、プリキュアシリーズは、<vs.自己決定の難しさ> と <vs.社会の抑圧> を概ね1年おきに交互に扱ってきたように見えます。それはプリキュアシリーズが、社会的に話題になることと同等、もしくはそれにも増して大事な価値を<vs.自己決定の難しさ>の問題に感じているからでしょう。

 例えば2017年放送開始の『キラキラ☆プリキュアアラモード』(以下『アラモード』)や2019年放送開始の『スター☆トゥインクルプリキュア』(以下『スタートゥインクル』)は <vs.自己決定の難しさ> を描いた作品だったと筆者はお見受けします。これらは2018年の『HUGっと』、2020年『ヒーリングっど』と入れ違いで放送された作品です。