プリキュアシリーズの第18作目、『トロピカル~ジュ!プリキュア』(以下『トロピカル~ジュ』)が1月30日に幕を閉じました。
プリキュアシリーズは幼年女子をメインターゲットにしたアニメ作品ですが、近年はジェンダーの視点など社会的意義の視点から大人の話題にのぼります。2018年に始まった『HUGっと!プリキュア』(以下『HUGっと』)の「男の子だってプリキュアになれる」という展開を記憶している人も多いのではないでしょうか。他にもプリキュアに登場するダイバーシティ(多様性)への理解や前衛的な意思決定が、大人から見ても刺激的でした。
しかし『トロピカル~ジュ』は、社会的意義の方向から話題になることは比較的少ない作品でした。しかしそれは『トロピカル~ジュ』がメッセージの弱い作品だったという意味ではありません。むしろ、「社会の抑圧と戦う」方向とは違う、もう1つのプリキュアの本流に乗っている、と申し上げたいのです。
もう1つの本筋とは、「自分が本当にやりたいこと」を見つける大切さと難しさです。
『HUGっと』の<vs.社会の抑圧>とは別路線
まず簡単に『トロピカル~ジュ』のあらすじを紹介します。
海の女王を目指すわがまま人魚のローラが、海のピンチを救うために「プリキュア」を探して人間界にやって来ます。そこで人間の主人公・夏海まなつと出会います。まなつとローラは学校で様々な仲間と出会い、プリキュアとして目覚めて海の魔女勢力と戦います。
はじめは自分のことしか考えなかった人魚のローラですが、人間の仲間たちと関係を深める過程で互いに人格的に成長し、自分たちが本当に「やりたいこと」とは何かを見つけようと試行錯誤していきます。
『HUGっと』などの社会の抑圧と戦う路線を<vs.社会の抑圧>と名付けるとすれば、『トロピカル~ジュ』のメインテーマは<vs.自己決定の難しさ>と言うことができると思います。
「今一番大事なことをやる!」と繰り返し謳い、登場人物たちは心の底から「やりたい」と感じたことを学校や街の人と協力しながら実現していきます。