広島県で自動車販売を手がける「広島マツダ」が、広島と東京で8店舗のお好み焼き店を持つ「みっちゃん総本店」(を運営する「IJSE広島育ち」)の全株式を取得した。

「自動車ディーラーがお好み焼き屋を始めるのか⁉」

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 一報を聞いた時、真っ先にそう思った。だが、調べてみると広島マツダは自動車販売以外の多角化経営をすすめている地元でも“注目の企業”のようだ。

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 原爆ドーム近くに開業した観光名所「おりづるタワー」をはじめ、広島市内のアパレル店も傘下に収める。沖縄のホテルやハワイで寿司屋も経営しており、新規事業は多種多様。

 2021年12月21日付の中国新聞のインタビュー記事によれば、グループ企業は全部で26社。大半が自動車関連の事業のようだが、その多様性から考えれば、今回の買収劇はそこまで突飛な話ではないことが分かる。

旅行会社がそば屋、写真館が旅館、製薬会社がカフェ…コロナ禍で増えた「異業種」への進出

 コロナ禍になってからは異業種への参入やM&Aが増えている。

 2020年10月には旅行会社のHISが、蕎麦を提供する飲食店「満天ノ秀そば」を埼玉県川越市にオープン。その後、都内に5店舗を開業した。

 同時期に、茨城県ひたちなか市のフォトスタジオ「小野写真館」は、伊豆半島の河津町にある高級旅館「桐のかほり 咲楽(さくら)」を買収。ロート製薬も2021年に薬膳と栄養学をベースにした料理を提供する店「WIRED CAFE」を展開するカフェ・カンパニーと資本提携し、持分法適用会社とした。

 M&Aの支援会社「バトンズ」が行った2021年の調査によると、買収を行った企業のうち「自社とは異なる業種を買収した」と回答した経営者は、約8割にも達している。

コロナ禍で続いた異業種進出の事例

 これらの事例の他にも、コロナを機に異業種に参入した事例は多々ある。飲食店がネット通販を始めたり、下着のメーカーがマスクを製造したり、コロナによってゲームチェンジした市場で、多くの企業が生き残りをかけて異業種に参入している。

 既存のビジネスモデルが行き詰まり、起死回生を狙って異業種に打って出た企業もあれば、コロナの収束を見越して、今のうちに安く買い叩ける事業を手中に収めた企業もある。その事情はさまざまだが、コロナが収束に向かう今、異業種のビジネスに参入することがトレンドになっていることは確かなようである。