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広島マツダがお好み焼き、HISがそば、ロート製薬がカフェ…相次ぐ「ナゾの異業種参入」成否を分ける“3つの条件”

2022/02/17

 一方、「面白い」という情熱を持たずに異業種に参入して失敗したのはライザップである。アパレルからネットショップ、スポーツ用品店まで、手当たり次第に企業を買いあさり、2019年には子会社が87社まで膨れあがった。

 しかし、2019年3月決算で赤字は193億円を計上。そもそも企業買収で支払った金額と買収先の純資産の差額で利益をかさ上げすることが目的だったため、買収した企業を立て直すまでの情熱と面白さは持ち合わせていなかった。

 先述の成功事例で紹介した楽天も、海外のM&Aでは失敗を重ねているし、ユニクロも過去には野菜の直販ビジネスで大ゴケしている。これらの失敗理由は「面白い」よりも「自分たちならできる」という油断があったことが、異業種への参入がうまくいかなかった要因だと思われる。

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異業種参入の「コツ」と「油断」

 未来が想定できてしまうビジネスは、面白さがないため、どうしてもアグレッシブに動けなくなってしまう。異業種への参入は多少「無理かもしれない」というハードルの高さがあったほうが、緊張感と面白い発想が生まれて、逆に事業がうまくいきやすいところがある。

 中小企業の異業種への参入も、「面白い」の視点が欠けてしまって、うまくいかないことが多い。地方都市の中小企業の事例でよく見かけるのが、工務店や建築業の経営者が、突然、居酒屋やカフェなどの飲食店を始めてしまうケースである。

 手元にお金のゆとりができると、「ちょっとやってみようか」と深い理由もなく飲食店をはじめてしまう。しかし、手間暇かけて1個数百円の利益しか出ない細々とした事業にすぐに嫌気がさし、事業が育つ前に放り出してしまうのは、ワンマン社長のお決まりのパターンだ。

 ひとつの案件で数千万円のお金を動かす建築業を本業としている経営者にとって、日々の小銭を稼ぐ小さな商いは、やはり「面白くない」ため、早々に事業から撤退してしまうのである。

「本業を疎かにしている」?

 3つ目は「既存客」への理解である。

 異業種への参入は、見方によっては「本業を疎かにしている」と思われてしまう。今回の広島マツダのお好み焼き屋の買収劇も、ウェブニュースのコメント欄を見てみると、本業に対する辛辣なコメントが多く目立つ。

 しかし、裏を返せば、それだけ広島マツダは地元に愛されているという証拠にもなる。観光目的の「おりづるタワー」も、観光客が多いお好み焼き屋の「みっちゃん総本店」も、地元客よりも県外客を意識したコンセプトのビジネスである。