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広島マツダがお好み焼き、HISがそば、ロート製薬がカフェ…相次ぐ「ナゾの異業種参入」成否を分ける“3つの条件”

2022/02/17
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異業種参入を成功させる3つの秘訣

 異業種への新規参入で成功する秘訣は3つある。

 ひとつは本業と「根っこがつながっている」という点である。一見、まったく違うように見える業態でも、根底にあるコンセプトや仕組みがつながっていれば、異業種でも事業を軌道に乗せやすくなる。

 たとえば、楽天は1997年にオンラインモール「楽天市場」をスタートさせたが、その後、旅行業や金融業などの異業種の企業を次々に買収、事業の拡大に成功した。当時、多くの業界はIT化が遅れており、そこに楽天の根っこの部分である「ITの力で売上を伸ばす」というロジックを組み込むことで、異業種への参入でも事業を急成長させることができた。

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 もし、当時の楽天がITよりも人の経験値に左右される畜産業や接客業の事業に手を出していれば、おそらく今のような日本を代表する企業にまでは成長していなかったはずである。楽天の強みでもあるITの力でレバレッジが効かせられず、「人」を介する事業に成功した体験もないため、M&Aは失敗に終わっていた可能性は高いといえる。

「根っこがつながっている」というのは、何も技術的な話でつながっている必要はない。たとえば、先述したHISが手がける蕎麦屋の新規事業も、はたから見れば突飛な異業種への参入に見えてしまうが、「日本人を海外に連れて行く」と「日本の食文化を海外に持っていく」という点でみれば、根底部分の仕組みはよく似ているといえる。

 もともと事業拡大に対して貪欲な企業なので、いずれ蕎麦屋の事業が国内で成功すれば、海外展開も視野に入れていると思われる。世界の主要の観光地にルートを持つHISであれば、飲食店の海外展開は、そこまでハードルの高い新規事業ではないはずである。

新規参入の後発組、“商機”はどこにあるのか

 2つ目のポイントは、新しい事業を「面白い」と思えることである。

 新規事業もM&Aも、既存の市場に参入していくことになるので、立場としては“後発組”になる。先にトップシェアを握っている企業には苦戦を強いられるし、お客には二番煎じと思われてしまい、なかなか新規事業を軌道に乗せることができない。どんなに良い商品やサービスを投入したとしても、先行している企業よりも状況は不利になってしまう。

 この厳しい状況を打開するためには、新しい発想と着眼点が必要である。「儲かりそうだ」「うまくいきそうだ」という、抽象的な気持ちで異業種のマーケットに飛び込んでしまうと、具体策が思いつかず、すぐに壁に当たって事業が尻つぼみになってしまう。

 しかし、経営者や従業員が新規事業に対して「面白い」と思える気持ちさえ持てば、新しい発想が次々に生まれて、仮に売上が低迷したとしても、好奇心とバイタリティで苦難を乗り越えることができるようになる。