大学入学共通テスト1日目の1月15日、大阪府寝屋川市の試験会場。約600人の受験生は、誰もが自分の力を信じ、本番に臨んだはずだった。1人の“女子大生”を除いては――。
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上着の袖に隠したスマホで問題文を撮影し…
〈今日は11時から世界史のテスト、よろしくお願いします。(中略)可能なかぎり早く正しく解答を導きだすという形で願いします!〉
当日朝、現役東大生の1人は、高校2年の「中野天音」を名乗る人物から、通話アプリ「Skype」のチャット機能でこんなメッセージを受け取った。その正体が“仮面浪人中”の女子大生A子(19)であるとは、まだ知る由もなかった。
A子から問題文の画像が送信されてきたのは午前11時過ぎのこと。共通テスト最初の科目「地理歴史・公民」試験の真っ最中だ。
「A子は上着の袖に隠したスマホで撮影した『世界史B』の問題文の画像約30枚を、複数の大学生に送信。うち2人が時間内に解答を返していた」(捜査関係者)
再受験を誓うも成績が伸びず、焦った末に…
不正行為は昨年12月から計画されていた。A子は17歳の高2女子を装って「家庭教師紹介サイト」に登録。東大生らに次のような設定でアプローチした。
〈家庭教師を探しています。指導をお願いする前に、テストで問題を解いていただき、実力を試したい〉
その日時として指定したのが、共通テストの最中だったというわけだ。
A子は高知県出身。高3で迎えた前年の大学受験では志望校に合格できず、滑り止めだった大阪府内の中堅私大に進学した。
だが、やはり納得がいかない。密かに再受験を誓うも成績が伸びず、焦った末に思い至ったのが紹介サイトを利用した手口だった。