「その女性はYahoo!のワクチンマップをみて電話をしてきたそうなので、当然『どういうことよ!』と激怒しました。でも、アプリには時差があって、半日ほど経たないと最新情報が更新されません。また、すぐに注文しても、ワクチンを接種できるのはもっとも早くてその日の夕方になります」

 しかし、佐藤さんが恐縮しながらそう説明しても、女性はまったく納得しない。「どの病院もそんな言いわけばっかり! 朝から電話し続けて、あんたのところで20軒目なのよ。私は東京オリンピックの関係者なのに、その私がワクチンを接種できないなんておかしいと思わないの!」とまくし立てたのだという。

「話は通じないし、何を説明しても一方的に怒鳴るばかり。おまけに自分はオリンピック関係者だと言い出すし……。仕方ないので電話を保留にして先輩に相談したら、『オリンピック関係者となると、それはうちで対応することではないので、保健所に問い合わせてください、と言いなさい』と指示されました。

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 そこで、そう伝えると『あんた、本当に頭悪いわね。保健所なんて、とっくに問い合わせているに決まっているでしょ!』とまた怒鳴られて。最終的には『あんたが私の代わりに日本医師会に電話して確認しなさい。それで、その結果を私に電話して教えなさい! わかった?』と言い捨てて電話を切られました」

 しかし、この女性は非通知でクリニックに電話をかけてきたので、本当に佐藤さんが医師会に問い合わせたとしても折り返しの電話番号がわからない。「ようするに、ワクチン不足への鬱憤をうちのクリニックにぶつけてきただけなんですよ」と佐藤さんは憤る。

「僕はこの薬を認めない」

 もうひとつワクチン絡みのモンスター患者を紹介しよう。子どもは生後2カ月からB型肝炎、ロタウイルス、ヒブ、小児用肺炎球菌といったワクチンを受けることができるが、倉澤裕美さん(仮名、31歳)が勤務する小児科クリニックの受付にある日、外国人の男性がワクチンの予約にやってきたのだという。

「その男性は受付に来るなり、うちが使っているワクチンを見せてほしいと要求してきました。それでワクチンの箱を全部もってきて、製薬会社の名前も教えたのですが、その人は『僕はこの薬を認めない』と言い出したんです」(倉澤さん、以下同)