しかし、よく考えてみるとおかしな話です。どうしてドンキはここまで派手に店舗の装飾をするのでしょうか。こうした派手なドンペンが置かれる例は、池袋だけではありません。たとえば、東京都大田区西蒲田にあるドンキ蒲田駅前店では、ドンキが入っているビルに、まるでスパイダーマンのようにドンペンが張りついています。ビルだけを見ても、ドンペンがいる!とわかるのです。
目立つようにドンペンを1つ置くのだって、費用としては安くないはずです。それに多くのドンキには「ドン・キホーテ」と書かれた大きな目立つ看板があるわけですから、ドンペンのような飾りは、ほんとうはなくてもいいはずです。では、ドンキはどうしてドンペンを置いているのでしょう。
「目立ちたい!」という感情がドンペンを置かせる
理由の1つとして考えられるのは、「ドンキを目立たせたい」ということです。ドンキの創業者である安田隆夫は、ドンキを運営する前、その源流であるディスカウントショップ「泥棒市場」を経営していました。これもまた、少しギョッとするような奇抜な名前です。安田はその自伝『安売り王一代』のなかで、その店名について「とにかく目立ちた」いためにこう命名したと語っています。泥棒市場は名前を変えてドンキになったわけですから、ドンキはその歴史のはじめから「目立つ」ことを意識してきたのです。ドンキが誕生したのは、1989年。ベルリンの壁が崩壊し、「平成」が始まった象徴的な年にドンキは産声を上げました。ドンキは当初、国道沿いなどのいわゆる「郊外」に店舗を建て始めます。日本のロードサイドは1970年代前半から活況を見せはじめ、1990年代には国道沿いにさまざまな商店やチェーンストアが立ち並んでいました。
そんななかでふつうの店構えをしていては、数ある店のなかで埋没してしまう─安田にはそんな意識があったのでしょう。逆に、店の外観を派手にして目立てば人々の目に留まる可能性は高まるわけです。だからこそ、ドンペンのオブジェが置かれたのです。それは「目立ちたい!」という欲望が置かせたものだと言ってもいいでしょう。