〈解説〉
『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』に続く、イタリアのドキュメンタリー映画の名匠、ジャンフランコ・ロージの最新監督作。ロージは3年以上もの歳月をかけて、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯を、通訳を伴わずに一人で旅をしながら、人々の日常にカメラを向けた。息子を殺され、哀悼歌を歌う母親。クルド自治区の治安部隊“ペシュメルガ”の兵士たちの休息。狩猟の手伝いをした稼ぎで、母親ときょうだいを支える少年。ISISに襲われた時の記憶を、絵や言葉で伝える子どもたち。20年以上もの間、戦争に翻弄されながらも懸命に生きる人々の姿を、インタビューやBGM、テロップを排して映し出す。第77回ヴェネチア国際映画祭でユニセフ賞など三冠受賞。104分。
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中野翠(コラムニスト)
★★★★☆既成の中東イメージを裏切るような、穏やかで静かな映像に目を見張る。信仰は桎梏なのか救済なのか? と考えさせられる。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆癒えぬ傷は多いが、少しだけでも癒えてほしいという祈りが沁みる。説明の省略は適切だが、静謐の強調はやや逆効果だ。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆銃声が聞こえる日常。誘拐され、暴力を振るわれ、殺人を目撃する少年。同じ時代を生きる彼らの傷の深さに面食らう。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆哀切にして壮麗。美的な強度と写実の精度を両立させる監督の真骨頂。紛争地の日常で刻まれた名もなき壁画を見るよう。
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洞口依子(女優)
★★★☆☆戦争とテロによって荒廃した場所に暮らす事について、ジャーナリズムとはかけ離れた思考。詩的で美し過ぎる恐怖。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
『国境の夜想曲』(伊、仏、独)
Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
https://bitters.co.jp/yasokyoku/