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「恋愛なんかしなくてもいいんですけど…」 東村アキコが「いい男がいないから恋愛できない」派に言いたいこと

東村アキコさんインタビュー #2

2022/02/19

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル

世の中の「初恋」需要はすごいボリューム

――それぞれ相手は違っても、思い浮かべる「気持ち」は共通だと。

東村 そうですね。それに、世の中の「初恋」需要ってすごいボリュームだと思うんですよ。

 たとえば菅田将暉くんや吉沢亮くんがたまたま同じ学校にいて初恋だったという女の子って、きっと何百人も、もしかしたら何千人もいますよね? そんなふうに、芸能人の数だけ「初恋」があると思ったら、この作品を読みたいと思う人だってたくさんいるはずだとも思ったんです。

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――初恋って特別ですからね。

東村 私の友だちのお母さんで、「中学生の時に西郷輝彦に告白された」という初恋ネタを勲章にしている人がいるんです。

 西郷輝彦さんは鹿児島県谷山市(現鹿児島市)のご出身で、そのお母さんと中学校の同級生だったそうです。告白された時、彼女は恥ずかしくて断ったそうなんですが、今でもテレビに西郷輝彦さんが出てくるたびに「この人同級生で、中学生の時に告白されたんよ」って嬉しそうに話してくれるんですよ。そのお母さんが、西郷さんの話をする時のキラキラする感じが私はすごく好きで。こんなふうに初恋を自分の栄養にできる人ってステキだなと思うんです。初恋にはそんな力もあるのかなって。

 

「初恋」が足かせになる場合、ならない場合の違い

――ただ、初恋を引きずって次に進めない、という不毛なケースもあるのでは。

東村 あります、あります! 悪い例(笑)! 

 私の知り合いの若い男の子で、まだ20代後半なんですけど、初めてつきあった初恋の子のことを今でも引きずって前に進めないという子がいるんです。

 その子の場合、最初につきあった彼女がものすごい可愛い子だったんですよ。で、酔うといつも「おれはすごい可愛い子とつきあったことがあって」とグダグダ話し続けるんです。ハッキリ言って、その女の子は気まぐれでつきあっただけなのに、それが忘れられなくて次にいけないという。

――両極端な例ですね。初恋の彼女が忘れられなくて次に進めない男性は「初恋」が足かせになっているようにも思います。

東村 彼と、友だちのお母さんの最大の違いは「目の前の幸せ」への感度だと思うんです。西郷輝彦さんに告白されたお母さんは、そのことを誇りに思いながらも、ちゃんと自分の目の前の人をハッピーにしてきたし、自分も大切にしてきたんだと思うんですよね。

 でも初恋をひきずっている彼は過去にとらわれて、目の前の人を幸せにすることを怠った結果、自分も不幸になっているというパターンだと思います。

 昔つきあった彼女の話をする暇があったら、目の前の女の子のいいところをひとつでも多く見つけた方が、みんなが幸せになりますよ。