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「顎の力に負けた」と言う人もいるけど

ーーちなみに、顎の力、噛む力は、大食いを左右するものですか? 

菅原 「私の顎の力に負けた」と、私には顎力があると決めつけて言い訳する人たちがいるんだけど、大会に出た女医さんが噛み合わせの力を測る機器を借りてきたので、測ったことがあったんですよ。

 そうしたら顎の力が弱かったのが、私や正司(※2)さんとかだったの。やっぱり、年寄り連中なの(笑)。若い子たちは、顎が華奢に見えても結構いい数字が出る。年寄りは、歯を悪くしてたり、治療してきたのが出てしまうという。 

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(※2)正司優子。「元祖!大食い王決定戦 爆食なでしこ乱れ咲き~ベトナム編」で優勝。 

ーーメンタルの強弱は関係ありですか。 

菅原 それも負けた人の負け惜しみだと思うんですけどね。「胃では負けないけど、菅原さんはメンタルが強いから」って言いたいだけじゃないかって。胃だけ強いとか、メンタルだけ強いってないですよ。勉強できる人は、努力もするし。両方ないと勉強できる子にはなれないわけ。それと同じで。 

ーー大食いの最中も、効率を考えながら食べるわけですよね。 

菅原 ノッてる時はそうですけど、負けそうだなってなるとなにも考えてられないですね。早く終わんないかな、みたいな感じになりますよね(笑)。「とりあえず、この場をしのいで次の回に行って勝てばいいんだ」とか、ろくなこと考えないですね。勝ってる時は、さらに勝つことしか考えないというか。もっと差をつけてやる、みたいな。 

 

ーー緊張するなんてことはあります? 

菅原 面接なんかではあるけど、大食いでは1回もないですね。「なんで、あがるの?」って、むしろ聞きたいですよ。だって、食べるわけですよね。これから難しい試験やりますよとか、この面接に落ちたら就職できないよとか、そういうプレッシャーがあるわけでもなく。ただ、食べるだけじゃないですか。 

ーー自分に対する過剰な期待、もしくは見栄みたいなものがプレッシャーになることもないと。 

菅原 自分の実力をわかっていれば、勝っても負けても私はこんなもんだと思えますからね。見栄とかは年齢のせいじゃないですか。振り返ってみると、私も10代の頃とかは大人の人たちが怖いとか、こんなことを言ったらどうしようとかいろいろと考えてたと思うんですけど。私は大会に出始めた時で、すでに40代なかばだったので。 

 いまも大会をやっている制作会社のボスが、私と同い年なんですよ。現場では、私とその人が最年長で、ディレクター、プロデューサー、ADさん、みんな年下なんですね。そういうのも、他の人たちより有利かもしれないですね。ちゃんと言うことは聞くんですけど、なにを言われても気にしないし、他人からどう思われても気にしないから。 

写真=佐藤亘/文藝春秋