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チケットの不正転売が禁止な理由

 法律を定めた目的は、以下のように記載されています。

チケット不正転売禁止法(目的)

 第1条  この法律は、特定興行入場券の不正転売を禁止するとともに、その防止等に関する措置等を定めることにより、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定に寄与するとともに、心豊かな国民生活の実現に資することを目的とする。

 チケットが不正転売されて起きる問題を具体的に考えてみましょう。

 まず、とあるアイドルグループのファンであるBは、Tドームで行われるツアーの最終公演に絶対に行きたいと思っていました。しかし、大人気のツアーの最終公演ともなれば、自力でチケットが取れる可能性は限りなく低い。チケットの当落発表日、ファンクラブからBに届いた知らせは、「残念ながらチケットをご用意することができませんでした」…。

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©iStock.com

 チケットは既に売り切れ、正式ルートでは購入することがかないません。友達もみんな抽選に漏れてしまったようで、同行者の枠にもアテがありません。しかし、何とかして手に入れたい、とSNSやオークションを検索すると、喉から手が出るほど欲しいチケットが、数多く販売されているのです! 喜びかけたBですが、その値段に目を疑います。そのチケットは、販売価格の10倍もの金額だったのです。

■問題点① 本当に行きたい人が行けない

 給料をチケット代につぎ込んできたBでしたが、さすがに10倍の金額のチケットには手が出せず、泣く泣くコンサートを諦めなければなりませんでした。転売目的でチケットが購入されることで、Bと同じ立場の大勢の純粋なファンが、チケットを購入する機会を奪われてしまうことになります。

■問題点② 事務所やアーティストに適切なお金が入らない

 転売されている以上、チケットは売れているのだから、運営は損をしていないのでは? と思うかもしれませんが、それは違います。

 仮にBが思い切って転売チケットを高額で購入したとしても、お金に余裕がなくなったBは、代わりに推しのグッズ購入と、次のコンサートを諦めることになります。

 このように、転売はB本人が予想外の出費を被るばかりか、その高額のお金が転売ヤーに吸収され、魅力的なコンサートを作り上げている推しや運営には、全く還元されないのです。