今回の四国新聞の書き方について他紙の政治部に取材してみた。すると、
「(小川氏が)街頭活動で話したりツイッターに書いているという事実があるにしても、普通は小川氏に当てて、双方の言い分を書くでしょうし、ノーコメントだったとしてもその旨を書くと思います。選挙前ならなおさら気を使うところなのですが」
平井氏のファミリー企業・四国新聞はむしろ「選挙前だから」取材せずに小川ネタを刺激的に展開したのだろうか?
今回の件、ほかの媒体では細かい情報が載っていた。朝日新聞は10月15日にデジタル版で次のように報じていた。四国新聞の記事の3日後である。
《町川氏によると、小川氏本人や自民党の関係者から立候補を断念するよう求める電話が相次いだという。》(10月15日)
四国新聞の記者に聞いてみた
自民党サイドからも立候補断念を求められたことがわかる。すると四国新聞は翌日に『自民県議から提案「3区から出馬を」 香川1区、維新町川氏』(10月16日)とさりげなく報じていた。あれれ?
私は今回の件について町川氏本人に尋ねてみた(10月30日・高松市内)。
町川氏は「私は小川さんにも自民県議にも同じ言葉を使ってお断りしました」。
11月11日号の「週刊文春」では町川氏は「小川氏より1日前に、自民県議からも取り下げ要請がありました。『選挙資金を出すから(香川)3区にして下さい』と。平井先生も自民党も相当焦っていたのだと思います」と述べている。
自民県議は選挙資金については否定していた。ここで注目したいのは、文春は自民県議にも取材していること。反論を載せていることだ。当たり前のことをやっているだけだが、これに比べると四国新聞が小川氏本人に取材をしないまま批判記事を載せた異様さがあらためてわかる。
なぜ君は当人に取材せずに批判記事を書くのか。
ということで投開票のあった10月31日の夜、私は四国新聞の記者に尋ねてみた。平井事務所から小川事務所に移動すると後方に「四国新聞」の腕章をつけた記者が複数いることに気づいた。やっと会えたね。
私はもっとも年長に見えた記者に近づいた。すると……。
記者は私を避けるように前方に移動し始めたのだ。じりじりと追う私。結局、事務所内をお互いに一周してしまった。めでたい空気の事務所で何をやっているのだ。こちらを認識していることもわかった。私が過去に文春オンラインで書いた、四国新聞についてのコラムを熟読してくれたのだろう。
そして遂に話しかけるタイミングを得た。「あの記事でなぜ小川氏に取材をしなかったのですか」。
返答は、
「いろいろお答えしたいのですが難しいので……。会社に来てください」(四国新聞記者)
何度も言われたのは「ここで取材はちょっと」という言葉だ。私の質問は「取材」と呼ぶほどそんなに大事なのか? 「現場」の人はすぐ答えられないよほどの事情があるのだろうか。