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「増えた」という回答では、ミドル層を中心に逆に多忙になっているという指摘がありました。

「コロナでテレワークが中心となり、コミュニケーション不足から開発の生産性が低下しました。これに対応するためミーティングが増え、ミドル層は色んなミーティングに顔を出すことになり、残業時間が増えています」(ゲーム)

「事業が順調で、案件が増えている一方、採用が追い付かず、残業時間数がかなり増えています。2000年代に新卒採用を絞った影響からミドル層が手薄で、中途採用してもなかなか定着せず、ミドル層へのしわ寄せが解消されていません」(消費財)

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 最も多かった「変わらない」という回答では、次のようなコメントがありました。

「コロナになった2020年は一旦減りましたが、その後、少し増えて元に戻り、今は若干増えています。テレワークで通勤時間を仕事に充てるようになったこと、テレワークでの働き方に慣れて対応できる業務が増えたことなどが減少要因です。逆に景気回復で事業が順調で、案件が多くなったことが増加要因です」(化学)

「リーマンショック(2008年)後の業績悪化に対応して業務合理化に努めて、残業が大幅に減りました。ただ、それ以降は一進一退が続いています。残業が増えるか減るかは、景気次第というところです」(輸送機)

「働き方改革」「DX」は残業減少にはつながらず

 ここで気になったのは、残業時間が増減した理由です。「景気」「業績」「採用」といったいつの時代でも問題になる事がらを挙げる企業が多く、「コロナ対応のテレワーク」を除くと、「働き方改革」「DX(デジタルデータを使った事業・組織の変革)」「RPA(ホワイトカラーの業務をロボットが自動処理)」といった最近の動きを指摘する企業はほとんどありませんでした。

「働き方改革をどう捉えるかにもよりますが、当社ではコロナ対応でテレワークが増えた以外は、仕事のやり方はそんなに変わっていません。従業員の意識については、昔は『残業して頑張っている』だったのが、今は『残業は悪いこと』に変わりましたけど」(商社)

「当社では2年前からDXを進めていますが、さほど業務合理化に寄与していません。残業時間数が減ったのは、残業規制の徹底など“力技”によるもので、全社的にはDXの影響はほとんどゼロです」(機械)

「当社ではRPAで間接部門の事務合理化を進めており、実際に成果は上がっています。ただ、単純業務はずいぶん前からアウトソーシングするか廃止しており、RPAの対象になった業務の割合は小さく、人員数や残業時間数にはあまり影響していません」(金融)

 安倍政権の時代から政府は「働き方改革」を企業・労働者に促してきました。企業は、「DX」「RPA」などで業務合理化を進めてきたと言われます。しかし、今回の調査を見る限り、「働き方改革」や「DX」「RPA」は残業時間の削減には結びついていないようです。