吉沢さんは15歳ごろ、叔父の紹介で時事新報社に入社。上司の石井満氏(戦後は日本出版協会会長)と出会ったことが、吉沢さんの人生に大きな影響を与えた。教育学者でもある石井氏は吉沢さんのことを何かと気にかけ、氏の勧めでタイプライターや速記の技術を身に付けることができたという。職場で出会った出版人との交流も盛んになり、同人誌を出すようになる。こうして、家事評論家としての素地が出来上がっていった。
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言われたことって気にならないし、めげたら損
――たとえば、日々生活していて、ちょっとムカッてきたり、怒ったりグチったりするようなことって皆あると思うんですけど、話すことでそのストレスを解消する人もいますよね。吉沢さんの場合は、どうやってストレスを解消しているんですか?
吉沢 ハハハ。私あんまり人の言ったことが気にならないんですよね。自分が何かを言われたにしても、あぁそうなのかと思うぐらい。古谷(夫)なんかに言わせると、「それは冷たいんだよ」って(笑)。だけど本当に言われたことって気にならないし、それにそんなことで自分がめげたら損しちゃう。
――いやぁ、素敵ですねぇ、吉沢さん……(笑)。
吉沢 いやいや。
――いつも同じ精神状態を保っていられるんですか?
吉沢 いや、そんなことないですよ。もちろん、そうじゃないときもあります。でもね、よぉく考えてみると、そんなに悩むことでもないやって思っちゃう。
――たとえば体調が悪いだけで、人ってちょっと落ち込んだりしますよね。そういうときは自然ななりゆきにまかせるんですか? それとも上向きにしようって努力されるんですか?
吉沢 努力よりも、「何年も使ってきた体でちょっとガタがくるのは当たりまえだわ」ってそういうふうに思っちゃう。だからむしろ、「長年、一度も文句を言わないで働いてくれた臓器にお礼を言わなくちゃいけないわ」なんて自分で思って笑ってね。フッフッフ。
――長く入院されるような大病は患ったことがないんですものね。
吉沢 したことないです。身体が丈夫だったってことは、私にとってすごくプラスだったんですね。それには一種の食養生というのかしら……養生するわけじゃないけど、バランスよく食べるんだ、それは絶対だなんて思って食事をしてきました。それについては良かったと思います。
――具合悪くてずーっと、一日中寝ているということはあるんですか?
吉沢 いえ、ないですね。もちろん今は無理をしないようにしていて、決まった時間に起きる必要もないですから、ゆっくり時間をかけて朝はベッドで過ごしたりもしますが、うちにいたらいつも起きています。夜寝るときには「ぜったいに長く寝よう」って思って、毎日寝る時間は長い。ちょっと寝にくいときは、睡眠導入剤みたいな眠りやすくなる薬を医師に出してもらっています。それを飲むと本当にすぐ寝ちゃってね、朝も本当になが~く寝ているんですよ。
――10時間くらい?
吉沢 はい、寝ることがあります。まぁ大体は7~8時間ですけどね。
――いつお会いしても、吉沢さんは朗らかでいらっしゃいますね。自然体でそうしていらっしゃるのだと思いますが、「笑い」は体に良いと聞きます。体の中の変な細胞をやっつけてくれるらしいんですよ。だから、吉沢さんは自然にそれが出来ているのではと。
吉沢 いやぁ、それは性格っていうのがあるかもしれない。大抵の人は悩んじゃうとこを、アハッと笑い飛ばしていた(笑)。昔からそういうとこがあるんですよね。結婚して古谷と暮らしていた時、古谷はウップンを晴らすためにね、人のことを、なんかかんか私に文句言うんですよ。私おかしくなっちゃってね、「関係ないでしょう、私に。アハハー」なんて笑っちゃう。そうしたら、「それもそうだ……」ってみんなで笑い出しちゃったことがありました。
――あぁ、それだぁ、吉沢さんがお強いのは……(笑)。
吉沢 そうだと思う。あんまり気にしないで、笑い飛ばしちゃうってとこね。