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当時の中国市場では、一部の人しか買えない高級品だった

 スタートの時点で最初のニセモノ業者がさくっと儲けるべく、ぽかぽか家族のニセモノを作ったところ、それが売れてヒットしたばかりに「使い捨てカイロはこういうデザイン」と国民の中に定着して、なかなかオリジナルデザインの呪縛から離れられない、そんな状況となっています。

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 中国のニセモノ業者は全貌が紹介されていることはあまりないのですが、なんと「ぽかぽか家族」のニセモノを作り出した業者はチャイニーズドリームとして中国の様々なメディアで紹介されています。

キャラ違いバージョンもオリジナルの何かが残る

――山東省の農村「七級東南村」出身の孫という青年が工場勤務を辞め、その日暮らしで内装工事を請け負った際、女性客が日本製の使い捨てカイロを使っているのを見かけた。これに孫は興味を持ち、故郷で研究を始めた。

 当時、小林製薬やアイリスオーヤマが販売した使い捨てカイロは、中国市場では数元から数十元と当時の中国人の所得水準からすると決して安くはなく、一部の人しか買えない高級品だった。日本でも飛ぶように売れていることを学んだ孫は、これを人口が10倍の中国市場で販売すれば素晴らしい可能性があると考えた。そこで孫は駆けずり回って数万元を借り、故郷で設備と原材料を購入し、使い捨てカイロの工場を立ち上げ、ECサイトで販売する。

村が一体となって製造している

 使い捨てカイロの材料は鉄粉とバーミキュライト、それにそれを包むためのパッケージ素材で、鉄粉は鉄製造に使われる充填剤を山東省から、バーミキュライトは河北省から、パッケージ用素材は浙江省義烏から取り寄せた。1年目ではやくも200万個を販売した。値段は1枚0.5元(1元=約18円)。原価は二重の袋が0.2元、発熱剤が0.1元、手包装が0.05元、合計0.35元しかかからず、0.5元という低価格で販売しても30%の利益率を実現した。

 毎年飛ぶように売れる中で、村の親戚や友人から「一緒に淘宝網にお店を開きたい」と相談されたとき、孫はタイピングを教えたり、ショップの登録を手伝ったり、サンプルの写真の撮り方を教えたりした。これにより村にネットショップが次々と立ち上がり、村民の3割が使い捨てカイロに関連する仕事に従事し、毎年1億5000万個の使い捨てカイロを出荷する偽ぽかぽか家族村が誕生した。

 2019年9月には、中国有数の淘宝(EC)村となり、孫は当時アリババのCEOのジャック・マー氏と対面し表彰され涙を流した。