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経営者として博士号取得も目指している

――サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)事業にも進出しましたね。

清水 事業を拡大するうえで、いずれ箱物(不動産)も持ちたいと思っていました。ただ、サ高住は事業規模が大きくなるのでまだ先と考えていたところ、18年に国土交通省の補助金(高齢者等居住安定化推進事業)が打ち切られると聞き、同時期に物件の打診もあったので思い切って進出しました。

 国土交通省の補助金は延長されましたが、18年に購入して正解でした。今札幌は地価が爆上がりし、当時の2~3倍になっていますからね。ラッキーでした。

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――今、従業員は何人ぐらいいるんですか。

清水 100人ほどです。アスリートは今のところ、フィットネススタジオで採用しています。

 アスリートはケガがつきもの。それを乗り越えて五輪などの大舞台に立っているので、身体のことは熟知しています。自分の身体を実験台にしてリハビリを学んでいるようなものですから。元ナショナルチームの選手もスタッフとして働いています。

 ただ、介護やリハビリ関係は資格がないと携われません。スタッフの多くが医学療法士、理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士、社会福祉士、柔道整復師、鍼灸師、アスレティックトレーナーなど何らかの資格を持っています。

 僕も経営者として彼らに負けられないと考え、15年に弘前大学大学院医学研究科博士課程に入学しました。ただ今は忙しくて、博士号の取得は未だできていないのですが…。

ソチ五輪で岡崎朋美さんと ©JMPA

利用者さんからの「ありがとう」が今の財産

――コロナ禍でリハビリ施設やスポーツジムなどは大きな影響を受けていますが、清水さんの会社はいかがですか。

清水 もろに食らっています。コロナ禍での経営は楽ではないです。

 事業を拡大すると多くの人から「儲かっていますね」と言われますが、この事業の大半の収入はレセプト(診療報酬)なので、インターネット事業や物販販売のように大きな利益が見込めるわけではありません。

 ただ、現役時代に染みついた癖で数字にはこだわっています。現役の時は数字を縮めることにすべてを賭けていましたけど、今は伸ばす方に(笑)。

 利用者さんから「ありがとう」と言われる機会が多く、これが僕の今の財産です。

 先日も、リハビリでスタジオに通っていた高齢の利用者さんがコロナ禍で来なくなり、どうしているかなと気になっていたら、その方の娘さんから亡くなったという知らせが届いた。そして可能であれば家族葬に参加して欲しいと。葬儀に参列すると本当に身近な家族ばかりで、他人の僕がいるのは場違いな感じがしたんですけど、家族全員から、清水さんに見送ってもらえて本人も本当に喜んでいるはずとお礼を言われました。

 施設を作って良かったと思うのはこんな瞬間です。自分でいうのもおこがましいですが、利用者さんからは顔を見るたびに「こういう施設を作ってくれたおかげで毎日元気でいられるよ」とか「ここに通うのが唯一の人生の楽しみ」と声をかけてもらえ、金銭以上の財産をいただいていると思います。