2月20日に閉幕した北京五輪で、金メダル1つ、銀メダル3つ、銅メダル1つを獲得した日本スピードスケート。現地からのリポートでさらに試合を盛り上げたのは、長野五輪金メダリストの清水宏保さんだ。

 現在、訪問看護、リハビリ施設やサービス付き高齢者向け住宅など、福祉ビジネスを札幌で多角的に経営している清水さん。介護というビジネスモデルについての考えや、今後の展望を聞いた。(全3回の3回目。#1#2を読む)

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高齢者の方が寝たきりにならないために

――リハビリ型通所介護施設、訪問看護ステーション、フィットネススタジオ、サービス付き高齢者向け住宅という今のビジネスモデルを確立したのはいつ頃ですか。

清水 一挙に始めたわけではありません。ビジネスを始めるにあたって4つの目標を立てました。1つは故郷の北海道で展開すること。2つ目はアスリート雇用に結びつく事業。3つめは社会貢献できること、そして4つ目はきちんと黒字を計上すること。この4つをクリアできるビジネスプランを考えました。

 社会貢献に直結する事業に拘ったのは理由があります。僕らオリンピック選手は、全額ではないにしろ幾ばくかの税金を投じて育成してもらっている。その是非論は選手の耳にも入ってきます。結果を出さなければ税金泥棒と言われ、税金の無駄使いと揶揄されることも。でも税金で育てたアスリートが引退後、社会に貢献できるようなキャリアを築くことができれば、アスリートの育成にも理解が得やすくなります。

 まさに医療や介護に関連する事業は、こうした循環の実現にも結びつくと考えました。

リレハンメル大会、男子500mでの清水選手 ©JMPA

――ただ、医療や介護は法律の規制が多い一方で、幅のあるビジネスでもあります。リハビリを軸足にしたのはどんな理由ですか。

清水 介護保険制度を調べている時、リハビリに特化した運営を行っている施設を見学したことがあったんです。リハビリ施設は小規模なところが多いのですが、そこは一定規模で運営していて、僕の理想に近いものがあった。その施設を参考にして14年、念願だったリハビリ型通所介護施設「リボンリハビリセンター」を開設しました。

 最近病院は長く入院させてくれません。その結果、リハビリ難民が多く生まれています。リハビリを計画的にやらないと元の体に戻すことは難しい。元に戻らなくても機能をある程度回復させるには、自分の症状に合ったリハビリは欠かせないのです。傷やケガが治ったからいいというものではありません。

――リハビリに、訪問看護ステーションやフィットネススタジオも開設する必要があったのですか。

清水 もちろんです。退院してもリハビリ施設に通えない人もいます。その人たちのために訪問看護で在宅リハビリを行う必要がありました。在宅リハビリを行いつつ、介助付きで外出できるようになったら通所リハビリへ。そして1人で外出できるようになったら、フィットネススタジオで個人に合わせたリハビリを行います。

 高齢者の方が寝たきりにならないためには、この3つの施設の組み合わせがどうしても必要でした。運動習慣の継続こそが健康寿命を延ばすことになりますからね。