「『これがウケるの?』っていう感じでした」
米英の違いだけでなく、インドや香港英語の訛り、さらには外国人に日本語がどう聞こえているのかを表現した「エセ日本語」を配信したら、537万回という破壊的な数字を記録した。わずか1分14秒の動画がそこまでの反響を呼んだことに、だいじろー自身も驚いた。
「『これがウケるの?』っていう感じでした。やっぱり発音なのかと。それからは発音に特化した配信に完全に切り替えました。エセ日本語は、英語の動画から着想を得たんです。アメリカではすでに10年ほど前に同じような動画がアップされていて、1000万回ぐらい再生されていました。でも日本語は誰もやっていなかったんです」
動画配信に加え、英語発音指導の仕事も始めた。相手は国連職員や会社の重役など、もともと英語に堪能ではあるが、もっときれいな発音を身に着けたい人たちが対象だ。その中の1人が、サッカー選手の本田圭佑だった。
発音という特技を仕事にすることができただいじろーは昨年夏、拠点を東京へ移す。新卒で入社した会社を半年で辞めた10年前を思い起こすと、まさしく「凱旋上京」だった。
イギリスで発音ツアーもやってみたい
「今まで色々な壁にぶつかりながらもがいてきましたけど、やっとです。小中高、そして大学生でやってきた好きなことに、立ち返ることができ、さらにそれで生活費も稼げて完璧です。これがやりたかったんです! 今は朝起きるのが全然苦ではありません」
今後は動画配信と発音指導を続けつつ、航空会社の企業研修やろうあ者の発音指導にも取り組んでいきたいという。
「イギリスで発音ツアーもやってみたいですね。南部の首都ロンドンからインタビューをしながら北上してスコットランドまで行き、発音の変異をデータとして残したいなあと。僕しか喜ばないかもしれませんが」
発音というメロディーに魅せられただいじろーは、やっとの思いで「好きなことで、生きていく」自分になれた。
写真=石川啓次/文藝春秋