成功体験を求めて、「東京ばな奈」を路上販売
きっかけは、だいじろーが住んでいたバンコクのコンドミニアムに、別の日本人男性が転がり込んできたことに始まる。バンコクに住み始めて約5年が経った時で、彼も製造関係の日系企業で働く現地採用組で、同じく独立心が強く、意気投合した。
「ルームシェアをするんだったら何かやろうと話し合った結果、『東京ばな奈』を路上で販売することにしたんです」
「東京ばな奈」とは、あの東京みやげの代表的な存在だ。相方の男性が所持していたその箱に「300B」(Bはバーツの意)と書いた付箋を貼り、2人で路上に立った。バンコクの大動脈と呼ばれるスクンビット通り沿いで、焼き鳥や果物、タバコなどを路上販売するタイの庶民たちにまぎれて実験してみたのだ。東京で言えば、新宿を横切る明治通りで路上販売するような感覚だろうか。
だいじろーが当時の心境を語る。
「俺たちには『売れる』っていう成功体験が必要なんだと、2人で熱く語り合っていました。いつまでも雇われるのではなく、自分の手でお金を稼ぐために何をすべきか。とにかく必死だったんです。でも路上販売は、通行人全員に無視されて1個も売れなかったですね(笑)」
「タイあるある」のコンテンツにシフトチェンジ
それでも2人は懲りなかった。
続いて浮かんだアイデアが動画配信サービスYouTubeだ。当時、人気YouTuberのHIKAKINが「好きなことで、生きていく」というキャッチフレーズで注目を集めていた頃で、だいじろーもそんな生き方に感化されていた。調べてみると、バンコクにはまだYouTuberがほとんどいなかった。
「これを毎日更新すれば天下を取れるんじゃないか」
思いついたら即行動に移すのがだいじろーだ。小型のビデオカメラを手に、撮影を開始した。最初は、タイの心霊スポットやスラム街への潜入、水質汚染が劣悪なチャオプラヤ川で泳いでみたりなど、奇抜なアイデアを実現する「タイで○○してみた」というコンテンツが中心だった。
「1年ぐらい続けましたが、登録者数がなかなか伸びませんでした。そこで、タイ在住の日本人にしかささらない『タイあるある』のコンテンツにシフトしたところ、一気に増えました」