虎ノ門、八日京、田町・品川…3つのエリアを開発する“強気”
かつてもこうした大量供給時代はあった。バブル経済崩壊後の1994年183万㎡、ITバブルが崩壊した2003年216万㎡、そして民主党政権時代の12年175万㎡。いずれも経済環境が思わしくない時代で、こんなに大量のオフィスを供給しても大丈夫なのか、マーケットは崩壊するのではと言われてきた。
だが、東京という巨大マーケットはいずれの危機においても、一時的な空室率の悪化や平均賃料単価の下落はあったものの、数年のうちに乗り越えてきた。日本中から「ひと」「もの」「かね」「情報」が集まる東京では常に成長産業が出現し、一時的に余ったオフィスビル床も、やがては貪欲に人員を増やしていく成長産業によって吸収されてきたのが今までの歴史なのだ。
デベロッパーは強気の姿勢を崩さない。特に、都心部ではこの5年間では、虎ノ門エリア、八日京と呼ばれる八重洲、日本橋、京橋エリア、JR操車場跡地などで開発が進む田町、品川エリアなどで大量のオフィスビル供給が予定されている。この3エリアだけで、この5年間の供給予定量の約半数を占めるほどなのだ。
東京ミッドタウン八重洲のアンカーテナントは?
だがここにきて、マーケットの状況を危ぶむ声が出てきた。今年(22年)は、供給予定が12棟49万㎡。供給が一段落した昨年の13棟61万㎡よりもさらに少ないにもかかわらず、開業予定ビルでの新テナント招致決定のニュースが少ないのだ。
八重洲に今年8月にオープンする東京ミッドタウン八重洲は延床面積28万7千㎡、うちオフィス部分面積でも12万7千㎡(約3万8千坪)に及ぶ大規模ビルだが、現状では、ネット上で調べる限りでは、新テナントとしての誘致が決定したとリリースされたのはM&Aキャピタルパートナーズの1フロア(約1200坪)のみだ。
何らかの理由でまだ、アンカーテナント決定のリリースを出していない場合も考えられる。しかし、ミッドタウンのような超巨大オフィスになると、通常は開業の1年前、少なくとも半年前までには、ビルの貸付床の半分程度を占めるアンカーテナントを決定している。開業時、必ずしも満室ではなくともアンカーさえ決まっていれば、テナント営業は強気に行い、開業後2、3カ月には満室にしているのが通例だ。
ちなみに同じく三井不動産による開発の東京ミッドタウン六本木のアンカーテナントとなった富士フイルム、富士ゼロックスは、ミッドタウン開業(2007年3月)の2年以上前である2004年10月にミッドタウンへの移転が決定されていた。また東京ミッドタウン日比谷は、もともと現地に本社を構えていた旭化成本社が「出戻り」の形で入居したものだ。
アンカーテナントのような大規模テナントの場合、オフィス内での内装工事で半年程度はかかるので、開業半年前に決まっているとの声が聞こえてこないことに、一抹の不安を覚える。