韓国の大統領選挙が3月9日に迫った。
大接戦となっている李在明・与党「共に民主党」候補と尹錫悦・野党「国民の力」候補の一騎打ち。事前投票前日の3日には尹候補と「国民の党」安哲秀候補が電撃的に野党一本化に合意し、「ゲームオーバー(尹候補の勝利)」という声が上がる一方、「逆風が吹く。(共に)民主党の結束力に火をつけた」とする見方が交錯する。
野党が一本化したことで事前投票率は過去最高となり土壇場でようやく熱気を帯びてきた。
選挙戦を象徴する「戦略的投票」
しかし、選挙期間中は当初から盛り上がりに欠けた選挙とさかんにいわれ、メディアやSNSで飛び交うキーワードも「(候補者の)非好感度」「配偶者リスク」などネガティブなものばかりだった。
これほど配偶者に注目が集まった大統領選はこれまでなく、李候補夫人は夫が京畿道知事だった時代に牛肉や寿司などの個人の生活費を支払うために法人カードを使用したり、道の職員に医薬品を代理で処方させたりするなどの「不法儀典疑惑」が暴露され、頭を下げた。
一方、尹候補夫人は経歴詐称などにより謝罪会見に追い込まれ、その後も録音された私的な会話が暴露された。後者のスキャンダルでは、会話からさばけた性格が窺われるとかえってファンが急増したが、株価操作への関与疑惑が持ち上がるなど話題に事欠かない。
そんな今回の大統領選を象徴するのが、有権者がよく使う「戦略的投票」という言葉だ。ある候補者を当選させないために逆投票をするという意味で、李候補がソウル郊外の城南市長を務めていた時代に同市に住んでいたという30代前半の会社員(女性)はこんな風に使っていた。
「女性が選ぶ 女性が変える」
「今回はどの陣営にも投票したい候補者はいません。ジェンダー政策も出していますが、口だけですから、期待していませんし。
特に李在明は、当時城南市に住んでいたから分かりますが、見える部分しか手をつけない。うわべだけを整えればいいという市政でした。ちょうど保護犬・保護猫への問題意識が高まっていた時には、市のマスコットとして保護犬(ラブラドール)を受け入れましたが、数年後、犬が前足に障害を負うと市は別の里親を探してもらうとして保護犬団体へその犬を返したんです。責任論が出ると、李候補はSNSへ『城南市所有の動物を、退任した市長が責任をとれと?』と書き込みました。今でも忘れません。
だから、『戦略的に投票』するならば、李を落選させるために、決して尹錫悦を支持しているわけではないですが尹に投票します」
つい最近のツイッターでは、「女性が選ぶ 女性が変える」というハッシュタグが登場し、ここでもこの言葉がさかんに使われていた。たとえば、こんな書き込みだ。