韓国の人々の日本への関心は低下
また、同じ討論会では日本絡みでこんな応酬もあった。「韓米日軍事同盟に参加し、有事の際、日本が韓半島(朝鮮半島)に介入することをよしとするか」と問われた尹候補は自身が公約に掲げているTHAAD(高高度防衛ミサイル)追加配備に触れながら「韓米日同盟があるので有事の際に日本の自衛隊が入ってくるかもしれないが、それを前提とする同盟ではない」と発言。これに対して、李候補と、さらには青瓦台(大統領府)の国民疎通首席が異例の反駁をした。
李候補は、「過去の侵略の事実を反省すらしない日本の自衛隊が再び韓半島に足を踏み入れる日を絶対に容認してはならない」と発言し、3月1日、国民疎通首席は「日本と大韓民国は軍事同盟の関係ではない。これは青瓦台の立場ではなく、大韓民国という国の立場」とコメントしている。
ただ、今回の大選ではこの他には日本に関連するような公約も、言葉遊びを超える議論も見当たらない。2017年の大選では「共に民主党」は「慰安婦合意の破棄」を公約にしていたことと対照的だ。韓国の人々の日本への関心が低くなっており、日本について発言しても、票にはつながらず発言すればするほど得票にはむしろマイナス効果と判断されているようだ。
世論調査の公表が禁止される3日直前、野党一本化の前には、尹錫悦候補39%、李在明候補38%という超接戦の結果が出ていた(韓国ギャラップ。安哲秀候補は12%だった)。
感染者増が投票にどう影響するかも注目
中道系紙記者は言う。
「朴槿恵前大統領の弾劾後で、保守派への風当たりが強かった先の大選でも『脱原発』という大きなアジェンダがありましたが、今回はそんなものも見当たらない。与野党とも政策も似たり寄ったりで、不動産問題、ポストコロナの経済立て直し、少子化・高齢化に伴う課題、環境問題など語るべきことは山積みなのに両候補ともビジョンはなし。互いの誹謗中傷合戦ばかりで、ここまで酷い大選は初めてです。
野党が一本化したことで浮動票がどう流れるか。李在明を嫌っている親文支持層がどういう選択をするのか、まったく予想はつきませんが、前回『共に民主党』に多く票を投じた20~30代の民主党離れが目立っている。これは今回の大選を見るひとつのポイントでしょう」
韓国では3月1日、コロナの新規感染者数が20万人を突破した。韓国当局は3月中旬までに35万人ほどに達してピークアウトするとしているが、感染者増が投票にどう影響するかも注目されている。