「息子は6月30日まで、2週間以上学校へ行けませんでした。校長とは欠席の連絡もかねて毎朝電話で話していたのですが、その間も盛岡市の不登校防止マニュアルに書かれている電話連絡や家庭訪問、プリントの配布などの対応は一切ありませんでした。家にこもるのはよくないのではと思い、私は幸い自営業で時間の自由がきいたので美術館へ出かけたり、自立支援センターで本を読んだりしてもらっていました。息子と粘り強く話す中で『お父さんと一緒だったら学校に行ける』と言い出したので、私から校長に、息子と一緒に教室で授業を受けることはできませんかと提案しました」
校長はその提案に同意し、7月1日から父親はAくんと一緒に登校し、Aくんの席の横にパイプ椅子を置いて1時間目から4時間目まで一緒に授業を受けることを決めた。しかしその初日、担任の女性教師は教室でこう宣言したという。
「朝の会が終わったあとに、女性教師が教壇から『保護者がいても私は自分のスタイルを一切変えません。私は自分のやり方でやります』と言いました。その意味は、すぐにわかりました。1時間目の授業中に男の子が消しゴムを転がしていたのですが、それを見つけた女性教師は教壇から男の子につかつかと歩み寄ると、顔を近づけて強い口調で『教室から出ていきなさい!』とすごい剣幕で怒鳴ったんです。そして泣きじゃくる男の子の腕を掴んで、教室から廊下へ引きずり出しました」
「今日は絵の具を忘れてきた子がいるので図工の授業はやりません」
担任は廊下に出した児童に向かって「廊下に立ってなさい!」「家に帰りなさい!」と叱責を続けた。Aくんの父親は女性教師の剣幕に驚いたが、その後も児童たちに厳しい言葉で注意する姿を何度も目撃することになる。
「図工の授業で絵の具を忘れた女の子がいた時は、女性教師は机をバンと叩くと『何であなた絵の具の道具ないの?』と詰め寄りました。怖くて泣きだした女の子を教室の前に立たせて同級生に謝罪させたうえで、『今日は絵の具を忘れてきた子がいるので図工の授業はやりません』と中止にしたのです。みんな残念そうにしていて、絵の具を忘れた女の子は責任を感じて泣きっぱなしでした」
女性教師の苛烈な態度は一向に収まらず、小学1年生の子供たちは常に萎縮しているように見えたという。父親が教室内で録音した音声には、女性教師が甲高い声で児童たちを叱責する様子が何度も登場する。
「『教室から出ていきなさい』『君は2年生にはなれません』『幼稚園、保育園に戻りなさい』というのが口癖で、ほかの教室に移動する時に整列しない児童に対しては『並べ! いいか! 急げ!』と、軍隊のような号令をかけていました。休み時間にチャンバラ遊びをしていただけの男の子に『君の体にもブスっとやってやるから』と言うなど、とても教師とは思えない発言もありました」
この女性教師が羽場小学校で1年生の担任を任されるのは3年連続だった。甲高い叱り声は教室の外まで響いていたが、他の教師が心配している様子などは見られなかったという。