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「1年生の教室は職員室のすぐそばで、校長も何度も教室の前を通っていました。しかし廊下に立たされている子を見ても、担任の女性教師が怒って廊下に立たせていることを察すると、見て見ぬふりをして去っていきました。この光景は何度も目撃しました。学校は女性教師のあの指導方法を黙認しているのです」

 父親は7月1日からAくんと一緒に登校を始め、父親が隣にいることで安心したのか、Aくんは以前の明るい表情を取り戻しつつあった。しかし父親は、Aくんとクラスメイトとの関係性も気になったという。

「私がいるにもかかわらず、息子は目の前でプリントを落とされたり、『何で学校に来ているんだ』と、“いやがらせ”に近いことをクラスメイトから受けているように見えました。校長に相談しても『自分のお子さんが一番ですからね』と、言うだけで対処はしてもらえませんでした。その後首が赤く腫れていたことがあり、息子に聞くと『クラスメイトに帽子で叩かれた』と言うのです。私はそれをイジメと認識しました。『我慢しないで先生に言ったほうがいいよ』と促して、その場で息子が女性教師に話しました。女性教師は叩いた生徒に謝らせて、その日は終わりました」

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 10月15日に父親が「今日から1人で学校へ行ける?」と聞くと、やはりAくんは学校へ行くことを拒否したという。

 校長に「息子が学校に行きたくないと言っている。原因は人間関係のようです」とすぐに連絡し、校長は「こちらで調べます」と返答したが、2週間経っても回答はなかった。「女性教師が怒る声が辛いようだ、クラスメイトからもイジメを受けているのでは」と改めて校長に伝えたが、その間も女性教師からは一度も連絡はなかったという。

「一度目の不登校になった時に、私は本で調べたり、不登校の専門家や支援団体に話も聞きました。その時に『無理やり引っ張って学校に連れていくのでなく、時には休ませることも大事』だというアドバイスもあって、二度目の不登校ということを考えて、自分で行きたいと思うようになるのを待とうと思いました」

女性教師が担任業務から離れることについての連絡プリント

教室での録音を教育委員会に提出すると…

 Aくんの父親は11月4日、文科省に電話で女性教師のパワハラと校長の対応を相談。文科省から県の教育委員会を通して盛岡市の教育委員会に連絡が入り、12月28日にAくん側の弁護士同席の上で、校長、担任の女性教師、教育委員会が同席する面談の約束を取りつけた。この間にもAくんは「また他の子が怒られていた」「学校に行っても楽しくない」と登校できない状態が続き、10月以降2学期は全休することになったという。

「教育委員会の人も同席してくれるということで12月28日の面談で事態がいい方向へ向かうのではないかと期待していたのですが、結局裏切られることになりました。当の女性教師は出席せず、校長も私が相談したイジメの件について『一切聞いていないし、知らない話である』と答えました」

 年が明けた2022年1月5日、校長に不信感を持ったAくんの父親は、改めて市の教育委員会へ向かった。教室でのパワハラ音声や、校長との電話でクラスメイトとの人間関係トラブルについて相談していた音声などをその場で再生し、あらためて対応を訴えた。

 調査を始めた教育委員会から、学校側の不適切な指導を全面的に認める電話がかかってきたのはその数日後のことだった。羽場小学校も2022年1月14日付の文書で、全校児童の保護者あてに女性教師が担任業務から離れることを発表した。

 しかしAくんの心の傷は深く、担任の先生が代わったことを伝えても登校を再開できない状態が続いたという。そして2022年2月1日には保護者説明会のおしらせのプリントが配られ、そこには校長と女性教師についての処分が綴られていた。