日本のアニメ・コスプレ・戦国武将などに魅了され、2011年より日本に滞在しているウクライナ人のセーニャさん(32)が「文春オンライン」の取材に応じた。セーニャさんはキエフ出身。母親と姉は3月2日、36時間かけキエフからポーランドに脱出したが、出国禁止の対象外である63歳の父親はキエフに残り、国を守るためロシア軍と戦うという。
セーニャさんに故郷の現状を聞いた。(全2回の1回目/2回目を読む)
『進撃の巨人』をモチーフにしたプーチンの風刺イラストが流行
「父親は、国のために残り、ウクライナ軍と共にロシア軍と戦います。姉の夫や友人も戦います。戦争に対して怖い気持ちもあるとは思いますが、やはり祖国を守るためと立ち上がる若者は多く、武器が足りなくなっている程だと聞いています。それくらい士気が高く、プーチンが許せないのです。
ウクライナでは2014年以降、アニメが好きな若者たちのあいだで『進撃の巨人』をモチーフにしたプーチンの風刺イラストが流行りました。壁を乗り越え、国に侵入しようとする巨人がプーチンやヤヌコーヴィッチ(親ロシア派のウクライナ元大統領)で、それに立ち向かうのがウクライナ兵という構図です」
――侵攻がはじまった2月24日の時点では、多くのウクライナ人がここまでの事態になるとは予想していなかったと伺いました。
「はい、最初の攻撃をうけた24日、何かあったら怖いのでポーランドの方に逃げるようにキエフにいる両親には何回も促しましたが、両親は信じていたんです。『プーチンはそこまでしない』『一般市民は撃たない』って……。
家の周りからは、毎日銃声や爆発音が鳴り響く
しかし、戦争が始まると、すぐに空港は抑えられ、キエフから脱出することができなくなりました。ロシア兵がキエフから逃げようとした人を撃つ動画もSNSで出回りました。ロシア兵は3人の子供が乗った車にも容赦なく銃を撃っていたのです。
これでは、車での移動は危険すぎる。電車に関しても駅は人で溢れていて、線路に落ちて大怪我をした人もニュースで報じられるなど現地はパニックになっていました。そこで私の家族はしばらくキエフにとどまることにしました。