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女性は社会のさまざまな場面でマイノリティになっている

 ちょっと想像していただきたいのですが、あなたを含めたお友達10人が「焼き肉とお寿司、どっちを食べに行こうか」となったとします。ひとりが焼き肉、9人がお寿司と希望を言えば、当然「お寿司」ということになるでしょう。ふたりが焼き肉、8人がお寿司でもそれは変わらない。

 では、3人が焼き肉で、7人がお寿司だったとします。そしたら「焼き肉派」の意見もようやく考慮されるようになる。つまり多数決が原則の社会において、「マイノリティの意見」が認識されるのは3割を超えてからがやっとで、それまでは見向きもされないわけです。

 私がよく耳にするのは「大事なのは優秀な人材が登用されることだ。30%と割合を決めると『女性なら誰でもいい』となり、優秀な男性を排除する“逆差別”になりかねない」という意見です。しかし、それは人口比で言えば男性とほぼ同数であり、マジョリティであるはずの女性が、社会のさまざまな場面でマイノリティになってしまっているという構造的矛盾から目をそらしています。

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 マジョリティの側が意識して、政治的、政策的なルールを作って手立てを打たなければ、女性に限らず、マイノリティはずっとマイノリティのままなのです。

 また、「30%」を実現するための「高い壁」の正体がなんであるかという議論が進んでいないことも、大きな問題です。

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「谷口さんはオンナやし、どうせわからへんやろ」

 先ほど申し上げたハラスメントの問題に加え、相変わらずの性別役割分担観念、女性の経済的な問題など、その要因は数多くありますが、やはりもっとも大きく立ちはだかっているのは「自らがマジョリティであることに、いまだ無自覚なおっさんが多すぎる」という問題でしょう。

 私のラグビー協会での2年間で、「マジョリティによるマイノリティ排除の空気」を嫌というほど感じました。

 もちろん法人準備室長、審査委員長という重責を任されたこともあり、私のことを尊重してくださった協会の皆さんも多かった。とくに若手スタッフにはラグビー界の改革を真剣に考えている人も多く、彼らからの期待は強く感じていました。

 しかし一方で、「つねに蚊帳の外」という雰囲気もありました。

「あぁ、谷口さんはオンナやし、どうせわからへんやろ、しゃーない、しゃーない、ええよ、ええよ」みたいな。これは一種の気遣いとも言えますが、そこには「俺たちのやり方がわからんヤツは、口を出さんでいい」みたいな“排除”の空気も感じられたのです。

「女性だからわからないだろう」「選手の経験がないから」「ヨソから来た人間だからしゃーないわ」みたいな三重のマイノリティであるために、組織のルールや内輪の論理がわからず、なかなか議論に踏み込んでいけない。私みたいなズケズケ言う性格ですらそうなのですから、ほかの女性理事はもっと大変だったと思います。