「おまわりさんも吸います?」
職務質問をしようと声をかけた2人の警察官に販売者の男性がそう切り返すと、周りにいた100人超の聴衆からどっと笑い声があがった。
諦めずに警察官が話を聞こうと、販売者の1人を歩道に呼び出すが、「通行の邪魔になってるよ!」とヤジがあがり、すごすごとその場を立ち去ることに。悔しそうに、離れた位置から様子を見守るしかないのだった。
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大麻同様に“ハイ”になれる「HHC」
3月8日、東京・西早稲田駅前の歩道には、若者男女の長蛇の列ができていた。
彼らが買い求めたのは、「HHC」と呼ばれる“合法大麻”だ。HHCは「ヘキサヒドロカンナビノール」という大麻由来成分の略称。大麻に含まれる微量の成分の一種を加工したもので、違法である大麻由来成分「THC」と似た、向精神作用などを持つとされる。大麻同様に“ハイ”になれるということだが、現在の日本では違法性はない。
昨今では「CBD」といったリラックス効果を強調した大麻由来成分が流行しているが、それとは似て非なる性質だ。薬局などでもCBD入りのシャンプーや、美容オイル、はたまたCBD入りのコーヒーを提供するカフェまで誕生しているが、これらには“ハイ”な効果はないとされ、商品化が急速に進んでいる。
HHCの吸い方は、電子タバコのブースターにHHCが入ったリキッドを装着するだけ。東京を中心に年明け頃から、若者たちの間では密かなブームとなっていた。
しかし、そんな“好況”が一転したのは3月7日。官報でHHCの規制が発表されたのだ。
厚生労働省はHHCを危険ドラッグの1つとして「指定薬物」に指定。3月17日からは、「製造・輸入、販売、所持、使用」が禁止されることになった。
規制発表の当日、大口の販売者が“放出セール”をツイッターで告知すると、それを求めて翌8日には大行列ができる事態に発展。冒頭でふれた長蛇の列を作っていたのは、ラッパー風のドレッドヘアーの若者から、これから仕事に行くというおとなしそうな会社員、列に並ぶ人々にインタビューするYouTuberまで、実にさまざま。なかには客に「もっと安く売りますよ!」と販売を持ち掛ける、別の業者の姿も見受けられた。