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「私にはパートナーの行動原理が理解できないこともある」プーチンが語っていた、アメリカやNATOに対する“根本的な疑念”

『オリバーストーン オン プーチン』より #2

source : 翻訳出版部

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, 読書

 2月24日、ロシアがウクライナに対する軍事侵攻を開始した。ウラジーミル・プーチン大統領は、侵攻の目的について「ウクライナ政権によって虐げられてきた人々を保護すること」と述べている。

 アメリカ合衆国の映画監督であるオリバー・ストーンは、近年の国際的な緊張についての「ロシア側の見方」を明らかにするために、2015年7月2日から2017年2月10日にかけてプーチン大統領へインタビューを行った。ストーン監督の代表作は、ベトナム帰還兵である自身の実体験を基に描いた映画『プラトーン』や、アメリカ政府による個人監視の実態を告発したエドワード・スノーデンの伝記映画『スノーデン』などがある。

 インタビューは、アメリカのテレビ局「ショータイム」が放送する4回シリーズのドキュメンタリーと、書籍『オリバー・ストーン オン プーチン』にまとめられた。ここでは、世界におけるロシアの立場やNATOについてプーチン氏が語った内容を、同書より再構成して紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

プーチン大統領にインタビューを行ったオリバー・ストーン監督 ©getty

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アメリカはロシアという外敵を必要としている

 ロシアとウクライナとの関係について話す中で、ストーン監督はウクライナで多くのNGOが活動していることを指摘し、アメリカの政治家や投資家が、ウクライナの独立を支援している例を挙げている。

 例えば、東欧を担当するビクトリア・ヌーランド国務次官補(当時。現在は国務次官)は、政権交代を積極的に支持していた。全米民主主義基金(NED)代表のカール・ジャーシュマンも、ウクライナの独立を望んでいたという。

 この指摘に対してプーチン氏は、以下のように述べた。

「私にはパートナーの行動原理が理解できないこともある。ときどき彼らはNATO陣営をまとめる、あるいは緊張感を持たせる必要があり、そのために外敵を必要としているんじゃないかという気がしてくる。イランに対しては様々な懸念があるとはいえ、現時点ではそうしたニーズを満たすことはできない」

 インタビューの中でプーチン氏は、度々アメリカを「パートナー」と呼称するが、そこには皮肉のニュアンスが感じ取れる。

プーチン大統領はインタビュー中、何度もアメリカを「パートナー」と呼称した ©文藝春秋

 ストーン監督が「要するに、ロシアのような外敵がいれば、アメリカとしてはヨーロッパ、そしてNATOが一致団結してアメリカを支持する状態に保てるわけだ」と返すと、プーチン氏は「まさにそのとおりだ」と続けた。

「私にはわかる。感じるんだ。そんな具合に内部から締め付けなければ、欧州大西洋主義は不安定化する。もはや冷戦時代ではない。数年前、国家指導者の集まりでこんな話を聞いたんだ。アメリカはロシアが自分たちの脅威となることを期待している。だが自分たちはロシアを恐れてはいない、と。世界が変わったことを理解していたからだ。外的脅威など……そんな緊張感を保つのはいまや不可能だ。おそらく誰かの利益に沿う考えなのだろうが、私は誤った論理だと思う。それは過去を向いた論理だ」

「残念ながらアメリカとの良好な関係を育もうとするわれわれの働きかけには、無理解か無関心しか返ってこなかった。だがそんな状況を続けるわけにはいかない」